不要となった旧型のスマートフォンの再利用などを念頭に置いた、道路交通や屋内、屋外環境などに関する情報を効率的かつ安価に収集する手法について検討開発した。情報を収集する対象は、道路交通情報や、屋内外、野外などで様々に異なるため、それぞれの要件を考慮した上で、低コストな環境センシングシステムを構築する仕組みについて研究を行った。スマートフォンをセンサー端末として応用する手法について、実環境で模擬実験を行い、その結果を国際会議などで報告するとともに、論文としてまとめて投稿を行った。 最終年度はドライブレコーダーとして使用した場合を想定した応用事例として、時空間的解像度の高い人流把握を低コストに実現するための人流推定法を検討した。この手法ではGPSによる位置情報や方位センサー、加速度センサーなどを搭載したスマートフォンはドライビングレコーダーとして用いるのに最適な端末と言える。 車載カメラ映像では歩行者同士の重なりや障害物による遮蔽が頻発し、常に各歩行者の全身を捉えることは困難である。しかし、車載カメラは移動するため、あるフレームで映像中に現れていない歩行者であっても、前後のフレームでは映像中に現れる可能性が高い。そこで、この特性に着目し、2段階で人流を推定する手法を検討した。まず、映像の各フレームに対して深層学習により前方および後方の2種類に分けて頭部検出を行う。その後、時間的に連続するフレーム間の検出結果に対して、位置および色類似度に基づき人物同定を行い、移動軌跡を推定する。性能評価のため、大阪市内で実際に収集した車載カメラ映像に対し評価実験を行った。その結果、車両走行時に対して人数の誤差率は前方、後方それぞれ0.07、-0.13となり、複数フレームの検出結果を統合することの有効性を確認した。
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