研究課題/領域番号 |
16K00127
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
舩曵 信生 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70263225)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 無線LAN / IEEE802.11n / MIMO / テストベッド / Raspberry Pi / USBアダプタ / スループット / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
29年度の研究では,本研究の4項目について以下の実績を得ている. 1.MIMO伝送最適化:①MIMOを実装している様々な無線デバイス(AP,PC,USBアダプタ)を準備し,それらを用いてスループット測定実験を行った.結果を用いて,これまで提案しているスループット推定モデルのパラメータを求めた.②SISOまたはMIMOの利用可能なPCを複数用いて,同一APと同時通信を行った場合のスループット測定実験を行った.その結果,単一PCとの通信に比べ,スループット特性に大きな違いがあることを確認した.関連文献の調査を行い,無線通信の原理に基づいて,原因を推定し,モデル化を行った.また,複数PC同時通信時のスループット推定モデルを用いて,本研究の核である動作AP構成アルゴリズムの拡張を行い,テストベッドを用いたスループット測定実験により,正しさを検証した.③①,②の結果を用いて,スループット最大化のためのMIMO利用可能なPCのネットワークフィールド内の配置場所の最適化アルゴリズムを提案し,テストベッド実験により,その正しさを検証した. 2.E-WLANシステム構成法:より現実的なネットワーク環境を考慮するため,ホストがE-WLANシステムに動的に参加および離脱を行う場合の動作AP構成アルゴリズムの拡張を行った.テストベッド実験により,その有効性を検証した. 3.分散データキャッシュ:E-WLANシステム内のファイル(コンテンツ)の管理に使用するための既存ソフトの検討を行った. 4.テストベッド構築:①小型・安価なAPとして,Raspberry Piを用いたソフトAPの実装を行った.②Raspberry Pi でのMIMO通信の性能向上のために,USB無線アダプタを用いたハードウェアチャネルボンディングを実現した.③上記1.および2.のために,28年度の研究で構築したテストベッドを拡張した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように,申請時の研究計画で挙げた4項目のそれぞれにおいて,十分に満足できる成果を得ていると判断している.詳細には,その中では,研究内容の具体化を進めるにつれて,当初の計画以上の知見が得られ,それに基づく成果が得られているものがある反面,事前の検討不足や機材購入の遅れなどにより,当初の計画よりは,やや遅れているものもある. 前者としては,単一APと,複数のPCと同時通信を行った場合のスループット特性が,単一PCとの通信時と,大きく異なることが挙げられる.今回,その原因を推定し,複数PC同時通信時のスループット推定モデルの拡張を提案している.それに合わせて,動作AP構成アルゴリズムの拡張も行い,テストベッド実験により,それらの正しさを検証している.また,Raspberry Piを用いたソフトウェアAPの性能向上のために,USB無線アダプタを用いたハードウェアチャネルボンディングを実現していることが挙げられる. 後者としては,MU-MIMO(マルチユーザMIMO)とSU-MIMO(シングルユーザMIMO)の使い分けの最適化や,E-WLANシステム内のファイル(コンテンツ)管理のための諸機能の実装の遅れが挙げられる. 以上より,本研究の現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,まず,現在までの進捗状況で述べた,やや遅れている研究課題である,MU-MIMO(マルチユーザMIMO)とSU-MIMO(シングルユーザMIMO)の使い分けの最適化と,E-WLANシステム内のファイル(コンテンツ)管理のための諸機能の実装に,積極的に取り組むこととする. 前者では,まず,MU-MIMOをサポートするAPおよびUSB無線アダプタを複数,購入する.現状,既にそれらのデバイスの選定を終えており,今後,購入とそれらを用いた評価実験を進める. 後者では,ファイル管理ソフトを導入し,その評価を行う.また,大規模ファイルサーバ用PC(デスクトップPCを予定)およびファイル分散保持用ノード(Raspberry Piを予定)におけるファイル管理手順(検索インデックスの付与,目次ファイルへの登録,低アクセスファイルの削除,高アクセスファイルのファイル分散保持用ノードへのコピーなど)の詳細仕様を検討し,それらの実装を進める. 更に,29年度の研究で実装した, E-WLANシステムへのホストの動的な参加および離脱時に発生する,既存ホストの接続先APの変更に時間がかかり,長時間の通信動作の停止が生じることが,問題となっている.今回,その対策として,参考文献で紹介されている,仮想APの技術を用いることを検討し,停止時間の短縮を進めて行く.
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