研究課題/領域番号 |
16K00138
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大島 浩太 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (60451986)
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研究分担者 |
安藤 公彦 東京工科大学, 片柳研究所, 助教 (00551863)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IoT / 無線センサネットワーク / 通信制御 / ネットワークアーキテクチャ |
研究実績の概要 |
本研究は、産業・社会変革が世界的に期待され、研究開発や投資が進んでいるIoT(Internet of Things)において、これまでのネットワークでは未想定の超大規模IoTノード群に対する高速アクセス性能や柔軟な運用管理、および社会に対して利益の高い実用性や効率性の確保を目指したものである。手法の根幹として、異種ネットワークの相補的連携方式により、ネットワーク機能面から開発する新しいアーキテクチャの開発を行うものである。異なるネットワークの連携・併用により、単一のネットワークでは達成が困難なネットワーク特性(平均経路長の短縮や頑健性の確保等)を具備したネットワークの実現を目指している。 研究は、モデル設計、シミュレータによる特性解析、通信方式の開発、さらなる評価と実証実験という流れで進める。平成28年度は、前述の目的を達成するにあたり、モデル設計と特性解析を主に実施した。モデル設計については、昨今のIoTにおける研究開発が多様性を見せていることから、Sinkノードにデータを中継伝搬するセンサネットワークモデル、電力管理のためのスマートグリッド、車両・船舶の情報収集、FinTech等のシェアリングエコノミーへの適用について検討・設計した。また、提案モデルは長距離リンクの通信特性が非常に重要になる。そこで、長距離リンクとして利用を想定している方式の1つであるLTEに関する調査実験も併せて実施した。次に、これまでに開発しているシミュレータソフトウェアの性能向上を実施した。開発済みシミュレータは、設計面では膨大数のノードのシミュレーションへの拡張は容易だが、シミュレーション実行端末の処理性能面の問題で処理完了までに数日を要するという課題があった。この点を、ソフトウェア技術による高速化により解決を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、本提案に先行して実施していた研究である、異なる通信手段を相補的に連携・併用することで単一のネットワークでは達成が難しい特徴を実現する手法を、IoT(Internet of Things)で求められる大規模ノードに適用するためのモデル化を行った。本研究課題では、膨大なノードからの効率的かつ低遅延な情報収集の達成を目標としている。この目標の達成にあたり、端末が具備する短距離無線通信手段のみを利用するマルチホップネットワークでは、ノード数の増加に比例して中継する必要のあるデータが増加することから、end-to-endの伝送遅延時間と処理負荷の増大という問題がある。そこで、提案手法である、長距離リンクも利用できるハイブリッドノードをばらまくことで、ノード数の増加に応じた伝送遅延時間と処理負荷増大の抑制を可能とする通信モデルの基礎を設計した。また、近年のIoTに対する注目は、様々な適用事例案やNB-IoTやLPWAといった長距離無線通信手段が登場している。そこで、設計した基礎モデルをこれらの事例や長距離通信手段に適用した場合について、多面的な検討を行った。さらに、実際の長距離無線通信の振る舞いを把握するために、LTE通信の通信品質評価を実施した。次に、提案モデルの効果検証のためのシミュレータについて、これまでに開発したシミュレータの機能改善を図った。先行研究で開発したシミュレータは、ソフトウェア機能としては大規模ノードやモデルの評価に最適化したシミュレーションが可能であるが、シミュレーション実行端末の処理性能面の問題で処理完了までに数日を要するという課題があった。これに対して、提案モデルにおいて処理時間を要すると考えられる部分を見直し、処理時間の改善を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 任意のIoTノードへの高速アクセス方式の開発と評価 昨年度に開発した大規模IoTにおける、異種ネットワークの相補的連携モデルについて、実機実装する場合にどのような通信プロトコルが必要であり、またハードウェア機能の制約を考慮した場合にどのような設計にすべきかについて検討する。次に、検討結果を踏まえて、小規模な評価システムを用いた実機実装と性能検証を行う。このフェーズでは、昨今のIoT関連の開発が活発になってきていることから、新しくかつ高性能なデバイスが多く登場し始めている。こういったデバイスは海外製が多いため、技術基準適合証明/認定に留意しながら、実用性を考慮したデバイス選定と通信手段選定を行い、プロトタイピングを進める。
(2) 大規模ネットワークエミュレータを用いた評価検証 大規模なプロトタイプシステムを実空間に展開して評価することは難しいため、大規模システムのエミュレータ等を用いた性能検証を行う。性能検証は、提案モデルと、実機によるプロトタイピングにより得られた知見を反映させた提案モデルの改訂版の両面から行うことで、理想的な状況と現実的な性能の両面から評価したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロトタイピング用の電子部品の購入用に計上していた予算について、平成28年度後半から高性能かつ安価なデバイスが多く発表され、また発売は次年度というものが多かったことから、平成28年度中に購入するのは適していないと判断した。さらに、シミュレーション用のワークステーションについても、同様の理由で一部を次年度に見送ることにした。そのため、当該目的で使用する予算を次年度使用に繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画の利用目的を踏襲し、プロトタイピング用の電子部品とワークステーションの購入に使用する。
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