研究実績の概要 |
多数の移動無線ノードから構成されるアドホックネットワークでは, 移動無線ノードの故障, 悪意のある移動無線ノードによる攻撃, 盗聴に対して耐性を持つことが求められる. 本年度は以下の研究成果を挙げた. (1) ビザンチン故障移動無線ノードの検出と通知: 昨年度考案した協調ウォッチドッグ手法を実装し, その性能評価を行ない, 提案手法の有効性を明らかにした. これまでの提案手法が配送経路を構築した後のデータメッセージ配送時の故障, 攻撃を対象としていたのに対して, 配送経路構築時の故障, 攻撃への対処が必要であるが, 従来は送信先無線ノードの偽装であるブラックホール問題のみしか検討されていない. この点に注目し, 中継無線ノード, 送信元無線ノードの偽装を検出する手法についての基礎検討を行ない解決の方向性を得た. (2) ノイズ無線信号の協調的送信によるデータメッセージ盗聴妨害: 昨年度までに考案した手法をAODVルーティングプロトコルへの機能追加によって実現する手法を考案して実装した. また, 当該手法の基本的な考え方をセンサネットワークにおけるセンサデータ配送に応用する手法を考案した. ノイズ無線信号の送信には隣接無線ノードの電力消費が伴うためにバッテリー残量の低減が問題となる. ここでは, 隣接無線ノード対によるセンサデータの転送が互いにノイズ無線信号として機能するようにすることで, 電力の有効利用を図る手法としている. (3) 故障耐性を持つ移動無線ノード位置情報取得手法: 無線センサネットワークでは, センサノードの位置情報を正確に取得する必要があるが, ノードの故障や偽装情報送信による攻撃に耐性を持つ必要がある. そこで, カメラ映像を用いた簡易で精度の高い協調的位置情報取得手法と衛星電波を用いた位置情報取得手法に故障, 攻撃耐性を持たせる手法を考案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題について当初の計画に沿った検討が進捗しており, 予定されていた成果を挙げることができている. 理論検討に加えて, シミュレーション実験評価, 実機実装が順調に進んでいる. また, これまでの検討から新たな問題点の発見とその解決への基礎検討がなされた小課題, これまでの成果の適用を広げるためのアイディアが生まれた小課題など, それぞれの小課題について有効な進捗があった.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度となることから, 各研究課題について成果をまとめる部分と今後の発展へと繋げる部分とを明確にして研究を進めることとする. 無線センサノードのビザンチン故障への対処問題については, データメッセージ配送時の問題については理論的検討は収束しつつあることから, 実装をほぼ終えている実験システムにおいて性能評価実験を行うことを中心に進める. センサデータの無線マルチホップ配送経路構築時における問題は, 基礎検討で得られている問題解決手法の検討を進め, その詳細を明らかにするとともに理論的な正当性を確認する. ノイズ無線信号の活用による盗聴防止手法については, センサデータ転送信号をノイズ無線信号として活用する手法において, 昨年度の成果は配送経路構築と送信スロット割当てを独立なものとしているため, 効率面での問題があることが把握されており, 今年度はこの問題を解決する. なお, 一般的な無線マルチホップネットワークを想定した手法については, 実機による性能評価実験を行ない, ルーティング, データメッセージ配送の遅延への影響を測定により確認する. 耐故障, 耐攻撃性能を備えた位置情報取得手法については, 理論検討を進めることで今後の発展への方向性を見出す. ただし, 一部の課題については今年度中に有効な手法を見出し, これまでに構築した実験プラットホームで簡易な性能評価実験を行うことを目標とする.
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