研究課題
仮想マシンを利用したクラウド・システムは,高い拡張性から分散システム構築のための基盤として広く利用されている.一方で,システムの大規模化,サービスの高度化・多様化,利用データの大容量化に伴う消費電力量の増大が環境保護上の問題となっており,省電力化が重要な課題となっている.以上の理由から,本研究では,実サーバ上で稼働した複数の仮想マシンで各種応用プログラムを実行した場合の仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルを定義し,定義した計算モデルと電力消費モデルをもとに,クラウド・システムにおいて応用プログラムを実行した場合にシステム全体の消費電力を低減し,かつ応用プログラムの要求するサービス品質(QoS)を満たす仮想マシンを選択する負荷分散アルゴリズムを提案することを目的としている.平成28年度は,はじめにマルチコアCPUを搭載した実サーバ上で稼働する仮想マシン数,仮想マシンに割り当てる計算資源および仮想マシン上で同時実行される応用プログラム数を変化させた場合の応用プログラムの実行時間と実サーバの消費電力を測定した.この測定結果から,実サーバ上で稼働する仮想マシン数,仮想マシンに割り当てる計算資源および仮想マシン上で同時実行される応用プログラム数を変化させた場合の計算資源の使用率,応用プログラムの実行時間,および実サーバの消費電力の変化を分析した。最後に,分析結果をもとに仮想マシンの計算特性に影響を与えるパラメータと実サーバの消費電力特性に影響を与えるパラメータを明確化し,仮想マシンの計算モデルと実サーバの消費電力モデルの定式化を行った.
2: おおむね順調に進展している
交付申請書の平成28年度 研究実施計画に記載した「仮想マシンの計算特性および実サーバの消費電力特性の測定」,「仮想マシンの計算モデルの定式化」,および「実サーバの消費電力モデルの定式化」が実施できている.また,この結果をもとに平成29年度に実施予定である負荷分散アルゴリズムの設計に着手できていることから研究計画通りに進展していると判断する.
平成28年度は,研究実施計画通りに「仮想マシンの計算モデルの定式化」および「実サーバの消費電力モデルの定式化」を完了することができた.よって,平成29年度は,平成28年度に定義した仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルをもとに実サーバ・クラスタ上で稼働している仮想マシンの中から応用プログラムが要求するQoSを満たし,かつシステム全体の消費電力を低減できる仮想マシンを選定する負荷分散アルゴリズムの設計を行う.提案する負荷分散アルゴリズムでは,仮想マシンの計算モデルをもとに,各仮想マシンで要求された応用プログラムを実行した場合の応用プログラムの実行時間および仮想マシンの総稼働時間を推定する必要がある.また,推定された仮想マシンの総稼働時間と実サーバの電力消費モデルをもと実サーバの消費電力を推定することも必要となる.よって,平成29年度は,はじめに,仮想マシン上での応用プログラムの実行時間,仮想マシンの総稼働時間,および実サーバの消費電力を推定するアルゴリズムを設計する.この結果をもとに,要求された応用プログラムを各仮想マシンで実行した場合に応用プログラムが要求するQoSを満たし,かつシステム全体の消費電力を低減できる仮想マシンを選定する負荷分散アルゴリズムを設計・実装し,動作検証を実施する.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
International Journal of Web and Grid Services (IJWGS)
巻: Vol.13, No.2 ページ: pp.145 - 169
http://dx.doi.org/10.1504/IJWGS.2017.10004125