本研究では,実サーバ上で稼働した複数の仮想マシンで各種応用プログラムを実行した場合の仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルを定義し,定義した計算モデルと電力消費モデルをもとに,クラウド・システムにおいて応用プログラムを実装した場合にシステム全体の消費電力を低減し,かつ応用プログラムの要求するサービス品質(QoS)を満たす仮想マシンを選択する負荷分散アルゴリズムを提案した. 平成28年度は,仮想マシンの計算特性と実サーバの消費電力特性に影響を与えるパラメータを明確化し,仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルの定式化を行った.平成29年度は,定式化した仮想マシンの計算モデルと実サーバの電力消費モデルをもとに「応用プログラムの実行時間と仮想マシンの総稼働時間を推定するアルゴリズム」および「システム全体の消費電力を低減するための負荷分散アルゴリズム」の設計と実装を行った.平成30年度は,はじめに実装した負荷分散アルゴリズムの評価を実施するためのシミュレーション・システムを構築した.次に,既存の負荷分散アルゴリズムと比較して,提案した負荷分散アルゴリズムが応用プログラムの要求するQoSを満たし,かつシステム全体の消費電力を低減できることを確認した.一方で,評価結果から,提案した負荷分散アルゴリズムでは,アルゴリズム実行前に仮想マシンの実行状態を取得する必要があり,このための通信中に発生する仮想マシンの状態変化により,応用プログラムの実行時間と仮想マシンの総稼働時間の推定が不正確となる場合あることが分かった.よって,仮想マシンの実行状態を取得することなく,応用プログラムの実行時間と仮想マシンの総稼働時間の推定ができるように提案アルゴリズムの改良を行った.また,改良したアルゴリズムの実装とシミュレーション環境での評価を実施し,提案アルゴリズムの有効性を検証した.
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