研究課題/領域番号 |
16K00155
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森本 康彦 広島大学, 工学研究科, 准教授 (00363010)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ビッグデータ / マップリデュース / 秘密計算 / スカイライン問合せ / Map Reduce / Secure Computation / Skyline Query |
研究実績の概要 |
本研究は,ビッグデータの事実上の標準であるマップリデュース(MR)計算モデルの計算過程でのデータ機密性問題の解決を目的としている.また,この研究を通して,MR計算モデルで動作する安全で新しい(時空間情報)ビッグデータアプリケーションの研究を合わせて進める計画である.尚,本研究の研究期間はH28年度からH31年度までの4年間で,この実績はその2年目(H29年度)のものである.
H29年度は,検索効率の低下が少ない数値データベースの暗号化手法を実装し,その手法および実験結果を発表した.本手法の既存の類似研究として,順序を維持した暗号化を行うことにより検索効率の低下を防ぐ手法が数多く発表されているが,これらの手法では順序が開示されてしまうために,プライバシーの面での問題が指摘されている.本手法では,秘密計算のアイデアを利用し,第3者にはわからない仮想の桁を定義し,桁ごとの順序を維持するが全体の順序は隠ぺいするという手法を取っている.この研究を国際会議CANDAR2017にて発表し,同会議において本論文は「Outstanding Paper Award」を受賞した.また,本論文のフルバージョンは,学術雑誌にH30年度中に掲載する予定である.
さらに,時空間情報ビッグデータアプリケーションの研究として,エリアスカイライン問合せをMR計算モデルで効率的に計算する手法を開発し,IEEE Big Data 2017国際会議で発表した.「エリアスカイライン問合せ」とは,地図上の地域の中で,他の地域よりも良い何らかの特性を含むものを列挙する機能で,様々なデータ分析に必要な重要機能である.この機能は,もともと本研究者らの研究グループで,考案されていたが,問題の本質的な難しさからビッグデータでの計算時間の大きさが問題であった.本成果によりこの計算時間の問題が解決した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた「スカイライン問合せ」のマップリデュースモデルでの秘密計算はH28年度内に完成した.それに加え,H29年度は計画していなかった別の暗号化手法(検索効率の低下が少ない暗号化手法)を生み出すこともできた.H29年度からは,予定していたMR計算モデルで動作する安全で新しい(時空間情報)ビッグデータアプリケーションの研究にも着手した.H29年度は,エリアスカイライン問合せをMR計算モデルで効率的に計算する手法を開発した.この手法は,現在はMR計算モデルで動作するが計算過程でのデータ機密性問題が未解決となっており,次年度以降はこの問題の解決を目指す計画である.
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に国際会議に発表した,検索効率の低下が少ない数値データベースの暗号化手法に関し,そのフルバージョンを論文にまとめ,国際学術雑誌に投稿,掲載を目指す.
同じくH29年度に国際会議に発表した,エリアスカイライン問合せをMR計算モデルで効率的に計算する手法に関しても,そのフルバージョンを論文にまとめ,国際学術雑誌に投稿,掲載を目指す.この手法に関しては,現在はMR計算モデルで動作するが計算過程でのデータ機密性問題が未解決となっており,次年度以降はこの問題の解決も並行して目指す計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額である42,122円は,本年度に使用した経費の端数から生じたものです.
上記端数分は次年度に計画されている国際会議参加旅費または参加費(その他の経費)として使用予定である.
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