BEM(境界要素法)を用いた脆性破壊アニメーションについて,データ駆動型手法による高速化手法に関する研究を行った.ここでは,機械学習手法の一つであるランダムフォレストの亜種である回帰フォレストを利用し,脆性破壊アニメーションを回帰問題として定式化している.BEM によるシミュレーション計算は一般に時間コストが高い.特に,COD(き裂開口変位)を求めるために毎フレーム連立方程式を解く必要があり,高速化のためのボトルネックになっている. そこで本研究では,シミュレーションの際,次のフレームにおける各頂点のCODの計算部分を,その頂点の周りの物理量(応力拡大係数,および,材料靱性)を用いた予測によって求める.データベースについては,BEMシミュレーションで求めた物理量を入力,CODを出力とし,入出力を1ペアにしたものを回帰フォレストの中に格納することで生成する.これにより,BEM の各ステップにおいて連立方程式を計算する必要がなくなる.実験の結果,シミュレーションで得られた破壊形状と,回帰フォレストの予測で得られる結果は,細部は異なるものの,全体的な形状が似通っていることが検証された.また,一旦データベースを作成してしまえば,予測を用いることでより高速に破壊形状を生成できることを実証した. また,ここで作成するデータベースは,オブジェクトのスケールを正規化することにより,破壊形状に依存しない汎用性を持つように設計した.これより,例えば,球や円筒といった単純なプリミティブ形状を破壊することで構築したデータベースを用いて,より複雑な別の形状の脆性破壊を予測できるようになった. 複雑形状になるほどシミュレーション時間,ひいてはデータベースの作成時間がかかるため,データベースに汎用性を持たせることにより様々なメリットを得られることを実証した.
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