研究課題/領域番号 |
16K00170
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
本多 弘樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20199574)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 並列処理 / GPU |
研究実績の概要 |
本研究課題は,高性能・低消費電力なGPUコンピューティングを実現するシステム構築を目指し,アプリケーションプログラムのGPUでの効率良い並列実行に必要となる,タスク分割,スケジューリング,データ転送等の最適化手法を明らかするとともに,これらを種々GPUプログラミング環境で適用するための方式を開発することを試みるものである.
初年度の平成28年度の研究計画では, 最適化手法に関しての検討から着手していくこととしていた.具体的には,最適化項目としてタスク分割最適化,タスク割当最適化,データ転送最適化,カーネル関数内最適化,メモリ最適化を当初の候補とし,これに加えてGPUプログラミングにおけるハンドチューニング技法をサーベイの上,最適化項目としてさらに対象とすべきものが有るか否かを検討し,さらに検討に際してはGPUのネットワーク機器への応用など,視野を広くとることとすることとしていた.
これに対し,GPUコンピューティングではGPUにおけるカーネル関数内の条件分岐においてスレッドによって分岐先が異なる場合に分岐先とは反対の実行時時間分の待ちが生じてしまい,総合的な性能が低下してしまう問題に着目した.また,そのような分岐が生じるアプリケーションとしてネットワーク侵入検知システム(IDS)におけるパターンマッチング処理のGPUでの実行を具体例として,サーベイを実施した.具体的には,異なる分岐先となってしまった際の現象の調査,パターンマッチングに用いられるAho-Corasik手法のGPUでの処理の調査を進めるとともに,それによって生じる問題を解決するための最適化手法について考察を進め,その結果, GPUにおける重要な最適化項目のひとつであることを明らかにし本研究で対象とすべき項目とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的では,次の点に重点をおくこととしていた. 1.タスク分割・割当の最適化:マルチGPU 環境において並列ネステッドループを分割して複数タスクとする際に,最適なタスク粒度,割当先(CPU,GPU,複数GPU)を決定するための最適化手法を明らかにする. 2.データ転送最適化:GPU を利用するに当たっては,CPU-GPU 間,および,GPU-GPU 間でのデータ転送が処理性能に大きな影響を及ぼすため,転送データ量の削減,転送回数の削減が求められる.本研究では真に必要なデータのみを転送する最適化手法,テータ転送と演算をオーバーラップさせる最適化手法,タスク分割・割当の工夫などにより転送回数を低減するための最適化手法を明らかにする. 3.カーネル関数内最適化:カーネル関数の実行性能は,使用するブロック数,スレッド数,レジスタ数,データが配置されるメモリ選択,メモリアクセスパターンなどによって大きな影響を受ける.それぞれのプログラムに応じて最適化を行うための手法を明らかにする. これに対し,本年度は三つ目のカーネル関数内最適化について優先的に取り組み,条件分岐実行においてスレッドごとに分岐先が異なる際にオーバーヘッドが生じてしまう現象に着眼したうえで,その現象の調査,そのような現象が生じる典型的なアプリケーションとしてのパターンマッチングを取り上げ,そのような状況を減少させるための最適化手法の対象とし,先行研究の調査,手法の考案を進めた.また,次年度以降に用いるテストベッドシステムに求められる機能の性差とその仕様を策定し,その一部の調達を行った.以上より,研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,本年度の結果をもとに,最適化手法の考案とその評価,手法を実現するソフトウェアモジュールの実装を進める.今後の研究推進の具体的方策は次の通りである. 1.考案した最適化方式とそれを実装したソフトウェアモジュールを,本補助金で構築したGPUテストベッドシステム上でベンチマークプログラムや実アプリケーションプログラムでの有効性の検証を進める. 2.前述の検証をもとに,それぞれの最適化手法において,さらなる最適化の余地がないかも検討を進める. 3.当初計画で対象としていた最適化機能だけではなく,実アプリケーションに即した最適化機能をも視野に入れる. 4.各機能の実装については優先順位を決め,進捗が思わしくない場合には,重要な機能の実装に絞るなど対処する.
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次年度使用額が生じた理由 |
評価に用いるテストベッドシステムの一部を最新機器とするため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にテストベッドシステムの一部の構築に使用する.
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