研究課題/領域番号 |
16K00177
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
竹房 あつ子 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 准教授 (70345411)
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研究分担者 |
高野 了成 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 主任研究員 (10509516)
小口 正人 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60328036)
中田 秀基 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人工知能研究センター, 主任研究員 (80357631)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クラウドコンピューティング / 分散処理 / ディープラーニング / 機械学習 / 資源管理 |
研究実績の概要 |
本研究は,大量のセンサデータに対し、センサ群およびクラウドの計算資源を有効活用して高精度な解析を即時に行う分散リアルタイム機械学習処理基盤を開発することを目的としている。 多種センサを配備し、それらから収集された情報をクラウドに集約して解析することが可能になってきた。一方、カメラの動画像はデータ量が膨大なためクラウドへの集約は難しく、その解析処理に必要な計算量も多いため、リアルタイムに高精度な解析を行うのは非常に困難である。よって、センサとクラウドの計算資源を活用した分散環境でディープラーニングによる高精度な機械学習処理を実現する。これにより、動画像と他のセンサデータを利用した高精度なリアルタイム解析を容易にし、様々な次世代サービスアプリケーションの創出に寄与する。 H28年度は、機械学習フレームワークの1つであるCaffeを拡張し、センサ側の計算機とクラウド側の計算機でパイプライン的に分散画像解析処理を行う手法を提案した。学習処理の分散方法、センサ側計算機の性能、センサとクラウド間のネットワーク帯域を変化させた評価を行い、学習精度をあまり落とすことなく分散処理による処理時間の短縮が可能であることを示した。また、分散メッセージングシステムであるApache Kafkaと大規模分散処理フレームワークのApache Sparkを用い、センサデータのための分散リアルタイム処理基盤のプロトタイプ実装を行った。 本研究の成果は、ACM HPDC 2016およびIEEE Big Data 2016でポスター発表するとともに、査読付き国際会議ACM IMCOM 2017で口頭発表を行った。また、国内の研究会等で5件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多種センサとクラウドを活用した高効率・高精度な分散リアルタイム機械学習処理基盤の構築を目指し、(1)センサ・クラウドを活用した分散処理基盤の構築、(2)高効率な分散リアルタイム処理を実現する資源管理機構、(3)ディープラーニングを用いた高精度分散動画像解析の3つの研究開発を行う。 H28年度は、各課題の概念設計を行うとともに、プロトタイプ実装を進めた。 概念設計のため、センサとクラウドを利用した機械学習処理における学習精度と性能特性の調査を行った。機械学習フレームワークの1つであるCaffeを拡張し、センサ側の計算機とクラウド側の計算機でパイプライン的に分散画像解析処理を行う手法を開発し、学習処理の分散方法、センサ側計算機の性能、センサとクラウド間のネットワーク帯域を変化させた評価を行った。実験から、現実的なセンサとクラウド間のネットワーク帯域下では、学習精度をあまり落とすことなく分散処理による処理時間の短縮が可能であることを示した。 また,分散メッセージングシステムであるApache Kafkaと大規模分散処理フレームワークのApache Sparkを用い、複数センサデータを扱う分散リアルタイム処理基盤のプロトタイプ実装を行った。Apache Kafkaにより複数センサ端末で構成されるセンサネットワークを構築するとともに、Apache Sparkによりクラウド側の計算環境を構築し、分散処理を可能にした。プロトタイプ上でディープラーニング用ライブラリChainerを用いた画像解析処理を行った結果、性能向上の余地があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
多種センサとクラウドを活用した高効率・高精度な分散リアルタイム機械学習処理基盤の構築のため、H29年度は分散リアルタイム機械学習処理基盤を完成させる。 (1)センサ・クラウドを活用した分散処理基盤の構築では、初年度に引き続き分散リアルタイム処理基盤の開発を進め、分散処理基盤上で様々な条件下での性能評価を行うとともに、評価指標を検討していく。 (2)高効率な分散リアルタイム処理を実現する資源管理機構の開発では、分散リアルタイム処理基盤のプロトタイプを用いたディープラーニング処理をクラウド環境で実行し、資源管理機構の最適化を図る。(3)ディープラーニングを用いた高精度分散動画像解析では、学習の精度、処理速度の双方の最適化を図っていく。 (1)、(2)、(3)の研究課題について、国内外の会議へ投稿するとともに、国際会議でポスター発表や展示発表を行う。 H30年度は、構築した処理基盤の最適化と機械学習の高精度化を進めるとともに、評価シミュレータを開発して実環境およびシミュレーション環境で有効性を実証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のための学会参加費、旅費に必要となるため、繰越し手続きを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年12月に開催されるIEEE BigData 2017で研究成果発表を行うための旅費として使用する。
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