研究課題/領域番号 |
16K00181
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
酒井 正夫 東北大学, 教育情報基盤センター, 准教授 (30344740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クラウド / ブロックチェーン / P2P / ストレージ / プライバシ / 秘密分散法 / 匿名通信 / 暗号通貨 |
研究実績の概要 |
平成28年度の目標は「機密性と信頼性を両立するP2P型クラウドストレージ技術の開発を行うこと」であった. はじめに,研究実施計画に従いP2P型クラウドストレージの要件定義を行い,その実現に必要な要素技術として秘密分散法や匿名通信技術(Tor,I2Pなど)について調査を行った.また,ネットワークセキュリティに関連する研究集会などに参加して,最新の技術情報の収集を行った. そして,それらの成果として,中央集権的な管理主体が存在しないピュアP2P型ストレージに対する不正な通信傍受や中間者攻撃を検知・排除する技術を開発した.この開発技術により,攻撃者が特定の攻撃対象ユーザのデータ保存先を識別することを困難にして,ユーザの保存データの機密性をより向上させる効果が期待できる.また,P2Pノード群が複数のローカルネット群を作成し,個々のローカルネットにおいてノード群が相互にリアルタイムで死活監視と保存データの信頼性回復処理を行うことで,保存データの自動的な信頼性維持を可能にする自律分散型信頼性回復技術も開発した.この開発技術により,保存データの改竄や消失が困難になり,信頼性向上効果が期待できる.さらに,自律分散型信頼性回復技術を導入したピュアP2P型クラウドストレージの保存データの定量的信頼性評価も行った.その結果,保存データの信頼性をユーザ自身が任意に設計可能であることも示した. それらの開発技術の概要は,国内シンポジウムと国際会議においてそれぞれ発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,ピュアP2P型クラウドストレージ技術の開発を行い,機密性と信頼性のそれぞれを向上させる技術の開発に成功したことから,順調な進展と評価している. 一方で,交付申請書では,サービス利用不能(DoS)攻撃を防ぐ技術の開発も計画していたが,今のところ具体的な成果は得られていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,進展が遅れている「サービス利用不能(DoS)攻撃を防ぐ技術」の開発を進める予定である.また並行して,交付申請書の計画に従い,計算機シミュレーション・理論的考察と応用アプリ作成を行う. なお,平成28年度は,研究対象を,中央集権的な管理サーバの存在を許容しないピュアP2P型システムに限定していた.しかし,研究の進展に伴い,ピュアP2P型の場合には保存データの信頼性維持が困難であり,実現できる機能も限定的であることが明らかになってきた.そのため,今後は,限定的機能を有する管理サーバの存在を許容するハイブリッドP2P型システムまで,研究対象を広げる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は幾つかの新技術の開発に成功し,国際会議で成果発表まで行った.この国際会議の開催日は年度末(3月26-29日)であり,その旅費総額の事前予想が困難であったため,大きな赤字にならないように予定していた設備備品や消耗品の支出を過剰に抑制してしまった. 結果的に,格安ツアーなどを活用した効果もあり旅費抑制に成功したため,34,618円の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,調査と理論研究を重視した結果,その実装やデータ解析の作業が後回しになり,申請書において計画していた「アプリ作成兼データ解析用ノートPC」の購入も先送りした.次年度使用額は,その購入費に充てる予定である.
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