研究課題/領域番号 |
16K00188
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
白勢 政明 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (70530757)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 暗号 / 電子書籍 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,電子書籍における著作権保護や貸借管理,および古本流通システムを実現する軽量計算の暗号技術を研究することである.電子書籍は,著者や出版社,販売者の立場では電子ファイルの複製の容易さによる著作権侵害への不安が発生し,購入者の立場では一時的な貸借が困難で古本流通ができないといった不便さが生じることが問題である.2000年以降開発されてきた高機能暗号技術は暗号技術のみでアクセス制御を可能としており,高機能暗号技術(特に楕円曲線ペアリング写像に基づくもの)の応用により電子書籍の不安材料や不便さを解消できる暗号技術を研究していく.申請書作成時点では,ペアリング写像の使用で実現できる,一斉配信に適した放送型暗号,時間指定暗号,アクセス制御可能な属性ベース暗号,代理人暗号や,準同型暗号を応用した暗号技術の開発を考えていたが,平成28年度は,代理人暗号を用いた電子書籍の貸借システムを考案し,実験的実装により動作確認を行った.このシステムは電子書籍貸借時にサーバアクセスが不要であり,各ユーザの端末がBluetoothなどで接続されていれば貸借が可能であり,貸借で必要な管理を暗号技術のみで可能としている. また,現在最も普及している公開鍵暗号であるRSA暗号が安全に電子書籍システムに応用できるかどうかを判断するために,RSA暗号の安全性に関する研究行った.その結果極一部であるが安全でない鍵が存在することが判明したため,本研究では不採用とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に電子書籍のためのサーバアクセス不要な貸借システムを考案でき,この成果をまとめた論文が国際会議に採録されており,おおむね順調な進捗状況である.但し,高速実装の研究が未着手である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は代理人暗号を応用した電子書籍のための貸借システムを考案したが,平成29年度以降は,時間指定暗号,属性ベース暗号,準同型暗号を応用した電子書籍のための著作権保護や古本流通システムを考案していく. また,これらのシステムの処理の高速化にはペアリング演算の高速化が必須であるが,本研究では楕円曲線y^2=x^3-3x+1の使用を考察する.楕円曲線y^2=x^3-3x+bが高速実装に適していることは良く知られているが,研究担当者はy^2=x^3+ax+1が高速実装に適していることを示しており,y^2=x^3ー3x+1は両方の特徴を兼ね備えているため,より高速実装に適していると考えられる.
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