研究課題/領域番号 |
16K00195
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研究機関 | 横浜商科大学 |
研究代表者 |
吉田 隆弘 横浜商科大学, 商学部, 准教授 (10329104)
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研究分担者 |
松嶋 敏泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30219430)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分散ストレージ / 再生成符号 / ネットワーク符号 / 秘密分散 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,大規模ネットワークデータ活用に向けた高機能な次世代分散ストレージシステムの新たな数理モデルの構築,および安全性と効率性の両面を考慮した理論的解析を行い,システムの構成法とその性能評価手法を確立することである.本年度は,故障ノードを修復可能な分散ストレージシステムを実現する代表的な技術の一つである再生成符号に対して,以下の研究成果を得た. 1) 一つの故障ノードをその都度修復する再生成符号のクラスに対して,安全性と効率性との詳細な関連性を解析し,各ノードが持つデータ間の情報漏えい量の大きさ(すなわち,相関の大きさ)に基づいた複数の部分クラスを提案した.これらの部分クラスを考えることで,各ノードが持つデータの大きさ(ストレージ),および故障ノードを修復するために必要な総データ量(修復バンドワイズ)の大きさの下限を導出することができた.さらに,各ノードが持つデータ間の情報漏えい量が最も大きくなる部分クラス,および最も小さくなる部分クラスに属し,かつストレージと修復バンドワイズが共に最小となる具体的な構成法が存在することを示した. 2) 上記の再生成符号を一般化した符号となる,複数の故障ノードを一括で修復する再生成符号(協調型再生成符号)に対しても,1)と同様のアプローチで研究を行った.その結果,各ノードが持つデータ間の情報漏えい量の大きさが最小(すなわち,互いに独立)となる協調型再生成符号,および各ノードが持つデータ間にある種の相関を持った協調型再生成符号における,ストレージと修復バンドワイズの下限を導出し,その下限をそれぞれ達成する具体的な構成法が存在することを示した. 3) 従来の再生符号における復元と再生成に関する条件を緩め,一般化した再生成符号のクラスを新たに提案した.また,そのクラスを実現する整数計画法に基づく構成法を提案し,その有効性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,修復可能な分散ストレージ技術に対して,現状モデルを理論的に検証すると共に,効率性と情報量的安全性の関連性を考慮した新たなモデルを再構築することが主たる目的であった.その意味では,おおむね順調に進展していると言える. 研究実績の概要で述べたとおり,再生成符号,および協調型再生成符号に対して,安全性のレベルに応じた部分クラスを新たに定義し,それらのクラスにおける効率性の限界を示すことができた.さらに,いくつかのクラスにおいては,この限界を達成する具体的構成法の存在を示すことができた.これは,再生成符号の本質的な性質を解明するうえで,大きな成果であると考えている. さらに,高性能な分散ストレージ技術の実現に向けて,復元と再生成に関する条件を一般化した再生成符号のクラスを新たに提案し,その具体的な構成法を示した.この一般化した再生成符号は,各ノードの耐故障性や処理能力に応じた柔軟な分散ストレージシステムの設計や,ノード間の距離やノード毎の重要度等の通信条件を考慮した場合の分散ストレージの設計を可能とする.したがって,大規模ネットワークデータ活用に向けた高機能な分散ストレージ技術の一つとして期待が持てる.
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今後の研究の推進方策 |
修復可能な分散ストレージ技術は,これまでに取り扱ってきた再生成符号だけでなく,Locally Repairable符号やFractional Repetition符号など,いくつかの符号クラスが提案されている.今後は,これらの符号クラスに対しても,安全性と効率性の両面を考慮した理論的解析や,モデルの一般化の検討を行う. また,秘匿関数計算技術に関する現状モデルの検証を行い,修復可能な分散ストレージ技術に基づく秘匿関数計算技術の数理モデル化について検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定であった学会を急遽キャンセルする必要が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で得られた成果(昨年度得られた研究成果を含む)の発表,および最新の研究動向調査のために,国内および国外の学会,シンポジウム等に積極的に参加する予定である.次年度使用額は,このための予算として計上する.
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