研究課題
色認知特性の変化を検討するためには抹消の色覚の静的特性に注目するだけでなく、可塑性のある高次視覚系における色処理系の特性を考慮する必要がある。本研究は色知覚に適した時空間構造の刺激を用いて、色認知の熟達化や個人差を測定する心理学的実験や調査を行い、高次色彩認知における動的過程を明確にすることを目的としている。人間の一般的活動に通じる高次色処理過程の融通性の高い特性をいくつかの側面から明確にした。主に20代の数百名規模の実験参加者に対して100hueテストを用いた性差を含む個人差の検討を行い、色覚障害者だけでなく健常者においても色識別力に大きな個人差があることが示された。この課題では個々の色チップを識別するときに具体的に何をイメージするかが重要であり、女性の多くは色チップに対して化粧品サンプルをイメージしたと報告している。具体的にイメージできた参加者の識別成績は、イメージできなかった者より良好であり、化粧品選択の経験の多寡が識別力に影響したのかもしれない。男性参加者の成績の平均は女性のそれよりも低いが、男性においても顔料や画材をイメージしたと報告した参加者は一定数いて、彼らの成績は女性の上位群と同程度に良好であった。色チップを日常生活の体験で扱った具体的な物やイメージと結びつけることができる能力は男女を問わず100hueで測られる識別力を向上させるのかもしれない。また知覚学習による熟達の過程を検討する長期にわたる色識別実験では、参加者20名のほとんどで色識別の誤答数が最初70以上あったが、15回程度の繰り返しで5以下になった。色同定については、最初200強あったものが同じく15回の繰り返しで半分以下まで減少した。また一部の参加者については熟達過程の眼球運動計測を行っており、注視時間の短縮や視線移動経路の単純化など、効率的な視認を示唆する結果が得られた。
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Color Research & Application
巻: 43 ページ: 247~257
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Psychology Applications & Developments IV: Advances in Psychology and Psychological Trends Series (Edited by Pracana, C. and Wang, M.)
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