研究課題/領域番号 |
16K00202
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
井上 雅史 東北工業大学, 工学部, 准教授 (50390597)
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研究分担者 |
花田 里欧子 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (10418585)
古山 宣洋 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20333544)
入野 俊夫 和歌山大学, システム工学部, 教授 (20346331)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 対話 / カウンセリング / 心的状態 / アノテーション / コーパス / 褒め / ミスコミュニケーション / マルチモーダル |
研究実績の概要 |
本研究は,三つの段階からなる.第一段階は,カウンセリング対話コーパスからの,褒める行為(コンプリメント)の抽出と,それらへの重層的アノテーション付与である.第二段階では,アノテーションとコンプリメントとのタイミングの関係の分析である.第三段階は,コンプリメントに適したタイミングを計るためのモデルを構築し,モデルに基づいてコンプリメントを行う対話システムを用いた,モデルの実験的評価である.本年度は,各段階において準備的作業を行った. 第一段階の準備として,収集済みのカウンセリング対話コーパスに対して,発話内容の書きおこしの作成と,傾聴状態の連続値アノテーション付与,マイクロカウンセリングと呼ばれるカウンセリングの微視的分析体系に基づいたラベルの付与を進め完成させた.本研究がターゲットとする褒める行為のみをデータ化するのではなく,カウンセリング対話全体の性質を記述する包括的なアノテーションを作成し,データの汎用性を高めている.さらに,褒める行為のアノテーションを9つの対話に対して付与した.アノテーションの基準の策定を通じて,アノテーションにおける個人間の差異について知見が得られた.また,褒める行為の持つ構造をアノテーションとして表現する方法の検討も進んだ. 第二段階の準備として,信号処理に基づく傾聴状態の変化点検出と,検出された変化点がどのような意味を持つのかの定性的な分析を実施した.これらを褒める行為の分析へと接続していく. 第三段階の準備として,規則にもとづく発話とモデルにもとづく発話とを組み合わせた,レストラン選択ドメインにおける説得対話システムの改善方法を検討した.説得対話はカウンセリング対話と比較して単純化されているため,モデルの検証に利用しやすいとの感触を得ているが,評価方法を洗練させる必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が研究機関を移ったため,分析環境を再度立ち上げる必要があった.したがって,研究分担者が監督するデータ整備作業に注力し,分析やモデル構築を後ろ倒しする事となった. 本研究の三つの段階のうち,第一段階であるアノテーションの付与については,対話コーパスの基礎的データ整備に大幅な進展がありほぼ完了させることができた.整備されたデータのうち一部を用いて,褒める行為のアノテーションに着手した.したがって,データ整備部分での遅れを取り戻しつつある. 一方で,第二段階での,アノテーションとコンプリメントとのタイミングの関係の分析については,傾聴度合と対話中の時間的な関係について検討を行ったが,コンプリメントのタイミングについては,今後分析を行っていく段階である.また,第三段階のモデル化では,システムの再実装が必要となるなど,遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度にほぼ整備が完成した基盤的なデータの活用を図っていく.褒める行為のアノテーションに着手したが,その付与対象となる対話数の増加および周辺情報のアノテーション付与を行う.連続値アノテーションにつては,傾聴度合のデータを,その影響元・影響先という観点から,褒めの行為と関連付けて利用する方法を検討する.また,書きおこしテキストが利用可能となることから,テキスト分析の手法を中心に,褒める行為の生起及び成否にかかわる要因の探索を進める.褒める行為については,その行為が失敗する場合に特に焦点をあてて,ミスコミュニケーションのモデルとしての検討を行い,ミスコミュニケーションの有無が与える影響を対話システム等で評価する方法の検討を開始する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機購入およびソフトウェア更新を計画していたが,当該年度の残額では不足しており,次年度交付分と合わせて使用したかったため.
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