研究実績の概要 |
運動リズム制御におけるドーパミンの役割を明らかにする目的で、2頭のサルに連続ボタン押し課題を訓練した。課題には、一定のリズム(SOA 800 ms)で点滅するボタンの点灯にタイミングを合わせて押す「リズミック課題」と、擬似ランダムな時間間隔(SOA800, 1200, 1600 ms)で点滅するボタンに反応してボタンを押す「ランダム課題」がある。 2016年度には、運動リズムに対するドーパミンD2受容体作動薬クインピロール、阻害薬ハロペリドールの効果を検討した。正常時には、サルはリズミック課題のみならず、ランダム課題の最長のSOA(1600 ms)の後でも反応時間(RT)が±100 ms未満の予測的ボタン押しを高い確率で行なった。つまり、運動リズムのみならず、ランダム課題における最長のボタン押し間隔も学習した。ハロペリドール、クインピロール投与後は、予測的ボタン押しが顕著に減少した。 2017年度には、ドーパミンD1受容体拮抗薬SCH23390のボタン押しリズムへの影響の解析を試みたが、投与直後から無動状態が見られ、投与量を変えても安定した効果は得られなかった。他のD1拮抗薬であるSCH39166を試したところ、安定した効果が1時間以上継続し、予測的ボタン押しが減少した。薬物の効果が運動のテンポによって変わるかを調べるため、SOA 800 msのリズムに加え、SOA 1000 msのリズムを訓練した。 2018年度は、SOA 1000 msとSOA 800 msの二つのテンポのリズミック課題を用いてSCH39166およびハロペリドールの効果を確認した。その結果、いずれのテンポでも予測的ボタン押しが減少した。以上の結果は、ドーパミンのD1、D2受容体の両方が運動リズムおよびタイミングの制御に重要であることを示している。
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