研究課題/領域番号 |
16K00208
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣瀬 信之 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (40467410)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | チャンネル間処理 / 時間間隙 / 空間周波数 / 両眼視野闘争 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,ある特徴次元における特徴値あるいは入力経路が同じ刺激間の処理をチャンネル内処理,それらが異なる刺激間の処理をチャンネル間処理と定義し,主に視覚におけるチャンネル間処理について解明することである.平成28年度は,空間周波数と入力眼を対象としたチャンネル間処理について検討した.空間周波数に関しては,異なる周波数帯域の刺激に挟まれた時間間隙と同じ周波数帯域の刺激に挟まれた時間間隙の検出感度を比較した.ホワイトノイズ刺激にそれぞれローパスフィルタとハイパスフィルタをかけて作成した低周波数刺激と高周波数刺激を時間マーカーとして時間間隙検出実験を行った.2区間強制選択課題と1-up 2-down適応法を組み合わせて個人毎の70.7%閾値を測定したところ,時間間隙前後で空間周波数が異なる周波数間条件では,空間周波数が同じ周波数内条件と比べて,時間間隙の検出感度が低下することが明らかとなった.この結果は,空間周波数次元におけるチャンネル間処理によって視覚の時間分解能が低下することを示唆する.入力眼に関しては,両眼視野闘争に対する触覚刺激の影響について検討した.人工芝とマットの実物およびその写真をそれぞれ触覚刺激と視覚刺激として用い,いずれかの触覚刺激を実際に触りながら,両眼視野闘争を生じるように異眼間呈示された視覚刺激について優位な見えを報告する実験を行った.その結果,触覚刺激と一致する視覚刺激が優位となる時間が長くなることが示された.この結果については,視触覚間でのテクスチャ情報の相互作用により視覚アウェアネスが影響を受けたものと解釈できると考えている.この他にも視覚以外で,周波数間無音検出,およびそれとの関わりが示唆される音声カテゴリー知覚についても検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追加採択であったため,実験機器の調達等に時間を要し,申請時の当初計画通りに進めることができなかった.ただし,既存の実験環境を用いて一定の成果を得ることができたことから,総合的に見てやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
空間周波数に関する研究では,当初計画にあった適切な閾値測定方法の模索に充てる時間が取れず,既存の実験環境を用いることとなった.そこで今後は当初計画通りに適切な閾値測定方法についてまず検討する.入力眼に関する研究では,反応の取得方法や刺激の呈示方法に改善の余地があることが分かった.そこでこれらの点を修正した上で,再検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
追加採択であったため,当初計画通りに進めることができず,特に研究成果発表に関する支出(旅費・その他)が不要となったため.
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画で平成28年度に実施する予定であった実験についても行うため,その分の謝金や研究成果発表に関わる支出が増える見込みである.
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