研究実績の概要 |
本研究の目的は成人てんかん症候群で最も頻度が多く難治性てんかんでもある内側側頭葉てんかん(MTLE:mesial temporal lobe epilepsy)の表情認知機能のメカニズムをfMRI(functional magnetic resonance imaging)を用いて解明することである.本研究において使用する表情認知課題は従来の静止画とは異なり実際により近い動画表情刺激課題を用いることを特徴としている. これまで,対象者にMTLEの診断の再評価と神経心理学検査(POMS 2)を行い,基準を満たすものに,表情認知機能評価を行い過去の報告と同様であることを確認し患者設定を行った.また,正常群についても同様に評価を行い,神経内科疾患や精神疾患の既往のない者を設定した. 本年度は,改良を行ったプログラムを用いて動画表情認知課題を施行しながら,MTLE群10例(平均年齢66.7歳)、正常対照群8例(平均年齢60.4歳)に fMRIを施行し画像解析を行っている。MTLE群において,fMRI試行中の表情認知課題の二者択一法による結果は,基本6表情(喜び,悲しみ,怒り,恐怖,驚き,嫌悪)のうち特に嫌悪の表情認知の正答率の低下を認めた. 神経科学研究より,顔表情認知には上側頭溝や扁桃体といった様々な脳部位の関与が知られており,損傷研究などにより情認知情報処理を行う脳領域として恐怖及び悲しみは扁桃体・嫌悪は島皮質の関与が指摘されている.MTLE群では側頭葉のてんかん性放電に伴い同領域の活動低下による表情認知機能の低下が予測され,それらの関与を明らかにするためにfMRIの画像解析を進めている.
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