研究課題/領域番号 |
16K00214
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
薬師神 玲子 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (30302441)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 技能学習 / 強化学習 / 知覚マッチング |
研究実績の概要 |
潜在学習の一種である知覚-運動技能の獲得は学習過程の意識化(言語化)が難しく、この過程を研究するための強力なパラダイムは確立していないのが現状である。本研究は、強化学習エージェントを人間のパフォーマンスの量的基準(理想的観察者)として設定し、人間とエージェントの成績推移を比較することによって、この種の学習中に生じる知識蓄積過程の解明を行おうとするものである。具体的には実験課題として知覚-運動技能獲得を単純化した知覚マッチング課題を用い、様々なモデルベース強化学習エージェント成績を基準とすることによって、課題に含まれるノイズの影響や意識化の段階および意識化に起因するプロセス変化等を量的な分析によって明らかにし、この課題遂行時に行われる知識蓄積過程のモデル化を行うことを目的とする。 平成28年度の研究では、Yakushijin & Jacobs(2009)で用いた知覚マッチング課題において、ボタンアクションー刺激形状変化対応の難易度が学習にどう影響するかについて、1.各ユニットが対応する形状変化の複雑さ 2.ユニット間の因果構造の複雑さ について複数条件を設定して実験を行った。条件間で参加者の成績の違いを直接比較するとともに、異なる内部モデルを想定する複数のモデルベース強化学習エージェントの成績と比較した結果、1の形状変化の複雑さは学習速度にほとんど影響しなかったのに対して、2のユニット間の因果関係の複雑さは、学習速度に影響を与えることが示された。また、強化学習エージェントを用いたシミュレーションによって、人間のパフォーマンスに見られる学習速度変化は、同一のモデルベース強化学習エージェントを用いて再現できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では、上記の実験に加えて刺激にノイズを混入する実験も初年度に行う予定であったが、これが次年度にずれ込むことになった。理由は、当初予定していた研究協力者の雇用が相手方の事情により出来なかったことなどが影響して、実験にかかる時間が長くなったためである。ただし、研究内容の面では順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は認知心理学実験について経験のある外部の人材を研究協力者として雇用し、昨年度よりも順調に実験スケジュールが遂行できるようにする予定である。研究計画は、内容的には変更なく行う。具体的には初年度に行う予定であったノイズを混入する実験を初めに行い、その後、知識の意識化段階を確かめる実験、学習転移の実験を行い、最終年度には研究計画書に記載した研究1~4の結果を踏まえて知覚マッチング課題遂行時の知識蓄積過程のモデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた解析用コンピュータについて、最初の実験では既存のシステムを利用する方が実験遂行がスムーズであると判断し、購入を2つ目の研究の前に行うこととした。すでに説明したとおり、予定していた研究協力者の雇用を初年度は行うことができなかったため、最初の実験の予定が遅れ、解析用コンピュータの導入は次年度に行うことになった。その予定金額と、初年度雇用予定の研究協力者の人件費の繰越が、次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度予定していた新しい解析用コンピュータの導入を2年目に行う予定である。また、今後の研究遂行を円滑にするために認知心理学実験の経験豊富な研究協力者を雇用し、謝金の支払いを行う。また、ウェブ実験を含めた実験参加者への謝金も、今年度は当初初年度の予定していた金額分も合わせて使用する。
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