研究課題/領域番号 |
16K00216
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (30384720)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会神経科学 / 社会性 / brain connectome / MRI / MRS |
研究実績の概要 |
本研究で昨年度から準備をはじめたMRI撮像法、解析パイプラインが完成し、神経細胞の構造・機能のコネクトーム解析が可能になった。また、MR spectroscopy (MRS)のMEGA-PRESSシークエンスを導入し、GABAとNAAの濃度を計測することを可能にした。約300名の被験者を対象に、MRI T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像、resting state fMRI撮像を行った。またこの300名は社会性や認知機能など約数百項目のデータを取得している。MRIデータはHCP解析パイプラインを用いて、半球180領域に分類された領域毎に灰白質の厚さ、体積、拡散密度、resting state時系列活動データなどを算出し、脳構造レベル・活動レベルでのコネクトームと行動指標との関連性を求めた。また、社会性の向社会性が高いヒト(pro social)と自己中心的なヒト(pro self)の左前頭葉のGABAとN-acetylaspartate(NAA)の濃度を測定し、社会性と前頭葉の関わりを調べた。その結果、基本pro socialなヒトが環境変化に応じてpro selfな考えに変化させるのは懲罰回避ではなく、搾取の嫌悪に基づいているが、基本pro socialなヒトがpro selfな考えに変化させる時にはそのような傾向を認められなかった 。またpro socialは右47lと右FOP4の領域間の機能的な繋がりとリスク回避性の間に正の相関があるが、pro self では、左33prと右8Avの領域間の機能的繋がりと正の相関を示した。また、MRSの結果では、pro selfのrDLPFCのGABA濃度は pro socialと比較し優位に高くなっており、pro selfでのみrDLPFCで抑制性神経細胞が強く活動していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最先端のMRIの撮像法、解析法のセットアップが完成し、300名程度の被験者の撮像ならびに解析も行うことができた。ヒトの社会性については、社会性のタイプにより脳の使い方が違うことが明らかにされていることから、社会性に関連する神経回路を検討する際には個人差を考慮する必要がある。本年度の研究で、個人差を検討することが可能になった。当初予定では、もう少し時間がかかる予定であったが、計画よりはやくセットアップが完成し、被験者のリクルートも順調に進んたことで、当初計画より早く研究は進んでいる。現在、解析をすすめ社会性の個人差の検討を行っている。研究全体の進捗としては、概ね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
社会性の個人差を明らかにするために、マルチモーダルMRIの撮像を約300名を対象に行い、また、解析パイプラインを用いたコネクトーム解析も順調に進んでいる。来年度は、個人差と社会性とコミュニケーションの関係性を明らかにする研究を進めていく予定である。本年度までに脳の構造レベルでのコネクトーム解析が完成したので、来年度は機能レベルでのコネクトーム解析を進め、非言語情報を通じた社会的相互作用による他者理解のメカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度、MRIの撮像法の開発、解析パイプラインのセットアップを中心に行っていたため、消耗品、旅費、人件費があまりかからなかった。そのため、予算使用が全体的に遅れたため、2年目についても次年度使用額が生じた。最終年度は、実験を精力的に行う計画となっているので、人件費が増える予定である。また、論文化に、英文校正、投稿料がかかる予定である。
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