本年度はカーネル法を用いた系列データ解析手法の開発を進めた。事象の発生時刻を表す点が時間軸上で散発的に存在している場合、連続的な関数と異なり、積分によって正定値カーネルを定義することができない。そのため点列に対する正定値カーネルが多数提案されているが、それを多チャネル上の点列に拡張するための一般的な手法を提案した。この研究成果は2018年6月に国際論文誌Neural Networksに掲載された。
評価実験では1次元上の点列を対象としたが、クリギングで行われるのと同様、2次元以上の空間に存在する点集合への自然な拡張が可能である。たとえばカラー画像において色空間を表現するためには少なくとも3チャネルが必要である。また、近年ではレーザー計測により奥行き情報が加わった画像も存在しており、自動運転などへの応用がある。このため本研究で提案された多チャネル点列上の正定値カーネルは画像処理において多様な利用が可能である。また、Nystrom近似によってカーネル行列の低次元表現を得ることで画像特徴量の獲得に使うことが期待される。
近年の生物学研究においては光遺伝学の利用が著しく進展しており、たとえば神経科学においてはカルシウムイメージングによって得られるカルシウムイベントが神経細胞における活動電位の発生と対応するとみなされ、脳活動を解析するための重要な手段となっている。本研究はそのような画像や動画に対してカーネル法による分析を可能にするものである。
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