研究課題/領域番号 |
16K00233
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
坂上 文彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00432287)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 5次元ライトフィールド / ライトフィールドディスプレイ / 暗号化情報提示 / 視覚特性 |
研究実績の概要 |
2年目となる本年度では,昨年度に引き続き5次元ライトフィールドの作成方法について検討を行うとともに,これを用いた暗号化情報提示に関する検討を行った. 5次元ライトフィールドディスプレイの作成においては,透過液晶ディスプレイを光線を遮るバリアとして利用し,その背面に様々な波長の光を提示可能なマルチバンドディスプレイを設置した.マルチバンドディスプレイはマルチバンドプロジェクタからの投影を拡散スクリーンにより拡散させることで実現した.これにより,再帰反射板を利用する方法と比較して,より少ないプロジェクタにより5次元ライトフィールドディスプレイを作成することができた.これにより,これまでに実現が難しいかった5次元ライトフィールドディスプレイをより簡易に作成・校正することが可能となり,様々な方法へと応用することが可能となった. さらに,このように構成したライトフィールドディスプレイを用いて,暗号化画像提示の確認実験を行い,その有効性を確認した.視覚による画像の暗号化では,まず,5次元ライトフィールドディスプレイの観測のモデル化を行い,そのモデルを用いた逆問題を解くことで,任意の画像を観測させるための5次元ライトフィールドの構成方法を提案した.また,提案法の有効性を確認するためにの実験を行った.この実験では,人間に直接観測を行ってもらうのではなく,複数のカメラにより撮影された画像を合成開口と呼ばれる方法により合成することで,様々な視覚特性を再現した.これにより,視覚特性ごとに異なる画像を観測させることが可能であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ,概ね当初の計画どおりに研究が進行している.ただし,一部の方法については当初の計画よりもより適切な方法を発見したため,そちらを採用している 当初の予定では,5次元ライトフィールドディスプレイの校正には再帰反射スクリーンを使用する予定であったが,この場合,非常に多数のプロジェクタを利用する必要があった.そのため,より少ない現実的な方法を模索し,現在のバリア構造とマルチバンドディスプレイを併用する方法を用いることとした.この方法は,作成の簡単さ,校正の容易性などの観点から事前の方法よりも優れているといえ,今後もこの方法を発展させる予定である. また,暗号化画像提示についても同様に概ね計画どおり進行している.この確認実験においては,カメラのレンズパラメタを任意に変更可能な特殊なレンズの使用を想定していたが,現在は合成開口と呼ばれる仮想的にレンズのパラメタを変動させる方法を利用している.この方法を用いることで,実験の再現性を向上させることが可能となり,より効率的に提案法の検証が行えるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる来年度においては,暗号化画像提示に関するさらなる検討に加えて,実際に人間の視覚特性を対象とした評価実験を行う.ここでは,人間の視覚特性を実際に計測し,それに沿った情報提示を行えるかどうかについて検討を行う.視覚特性の計測では,研究グループ内で提案している4次元ライトフィールドディスプレイを用いた視覚特性計測法を5次元ライトフィールドディスプレイを用いる方法へと拡張する.これにより,焦点距離などのレンズの光学的特性に加えて,分光感度などの人間の視覚系に起因する特性の計測を行う.さらに,その特性にあわせて提示画像を作成する方法について検討する.また,実際に5次元ライトフィールドの提示を行い,より低次元のライトフィールドを用いた方法との比較を行うことで,本研究で提案する方法の有効性を確認していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究において、一部の方法を当初の予定から変更したことにより、機材の購入計画に変更が生じている。具体的には、ライトフィールドディスプレイの構成方法として非常に多くのプロジェクタの購入を計画していたが、方式の変更によりその台数が大幅に減少された。また、国際会議への出席が当初の予定より減少したことにも起因している。これは、計画の遅延による発表の遅れではなく、共著者が発表を行ったため研究代表者自身が現地へ赴かなかったためである。
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