本年度は,昨年度に引き続きライトフィールドのディスプレイの構成方法について検討するとともに,実際に構成したライトフィールドディスプレイを用いた人間による主観評価実験およびカメラによる客観評価実験を行った.まず,ライトフィールドディスプレイの構成については,以前より検討を続けている液晶ディスプレイを用いたバリア方式に加えてレンチキュラーレンズ,レンズアレイを用いる方式についても検討を行った.これら2つの方式を比較したところ,バリア方式を用いる場合はディスプレイの校正が比較的容易に行えるものの光線の多くがさえぎられるため観測結果が非常に暗くなってしまうのに対し,レンズ方式を利用する場合には明るい結果が得られやすいことを確認した.その反面,バリア方式と比較すると投射される光線のふるまいが複雑なものとなるため,ディスプレイの校正が難しくなることを確認した.これらの理由から,ユーザに対する提示実験はバリア方式を用いたディスプレイで行い,レンズを用いる方式についてはこれと並行して校正を容易に実現するための方法について複数の方法による比較を行い,どのような校正方法が適切であるのかについて検討を行った. また,ユーザに対する提示実験においてはユーザの視覚特性に応じた投影パターンの推定を行い,複数のユーザに対してそのパターンを提示した際にどのような観測が行われるのかを確認した.この結果から,特定のユーザに対しては適切な画像提示を行えることを確認した.さらに,カメラを用いてカメラの特性に応じて観測画像がどのように変化するかを調べる客観評価実験を行い,特性に応じて異なる画像が観測可能であることを確認した.また,これらの主たる研究内容と並行して,視覚の時間応答特性を用いる方法や,水滴などの自然レンズを用いたライトフィールドカメラの構成など,本テーマのサブテーマとなる研究を実施した.
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