研究実績の概要 |
当実験計画では分子生物学的技法を導入した解剖学的研究による神経構造の解明とシミュレーションによるモデル研究を有機的に結びつけ、情報学における新しい研究手法の確立をめざしており、当初は聴覚系の脳幹上行伝導路におけるビームフォーミング処理の可能性について注目していた。しかし、申請書及び前回の実施状況報告書にも記載したように新教授の就任に伴う教育研究体制の大幅な切り替えがあり、研究においても大脳皮質層構造の発生からみた形態解析を中心にシフトがあった。具体的には正常な大脳皮質層構造の形成に不可欠なReelin情報伝達系において、その下流に位置するDab1およびSbno1 についてconditional knock out個体を作成し、その形態解析を通して分子機序の解明を通した大脳皮質層構造の形態・機能形成の解明を目指しており、その中で古典的鍍銀染色による形態異常の可視化や、Diffusion Tensor法による神経連絡構造の可視化・比較において成功を収めた。これらは申請課題の発展的課題に挙げた形態数理的解析の対象として価値がある。このうちDab1に関する貢献の一部は新たに発表された学術論文の一部になった。Blume M, Inoguchi F, Sugiyama T, Owada Y, Osumi N, Aimi Y, Taki K, Katsuyama Y. Dab1 contributes differently to the morphogenesis of the hippocampal subdivisions. Development, Growth & Differentiation. 2017 Oct;59(8):657-673またこれらの研究活動を通して、情報学・シミュレーション研究において強みを持つ学生協力者の確保にもつながった。一方で本年度は聴覚系においても、当初の実験計画において中心的なアイデアの元になった抑制性投射経路の特徴について論文発表の準備作業を再開しており、助成期間中の発表に向け順調な進捗があった。
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