本研究課題の目的は,研究代表者の提案する三次元形状・光反射特性同時計測システムにおいて,高精度かつ高安定な計測を実現することである.本システムは走査型LEDドーム照明と時間相関カメラにより構成される.本研究では新たな照明方式として,回転位相シフト正弦波PWM方式の実現を目指している.この方式では,ドーム照明の緯線上のLEDをすべて同時にPWMにより疑似的に正弦波で強度変調しつつ,経度ごとに位相シフトを与える.この照明下でドームの北極方向から時間相関カメラによって対象物体を撮影すると,表面上の各点における反射光強度波形のフーリエ係数が1フレーム画像として出力される.このフーリエ係数画像をすべての入射緯度のLED照明に対して取得することにより,対象表面上の各点における法線ベクトル,拡散反射係数,および鏡面反射特性のパラメータが,理論上は実質1フレーム時間で計測できる.一方昨年度までに,従来方式システムの性能向上と,新方式の実現可能性の検討を目的として,時間相関カメラをそれぞれ1台ずつ購入したため,残りの予算で従来方式システムを新方式に改造したり,新方式のLEDドーム照明を新規に製作したりすることは困難となった. この回転位相シフト正弦波PWM照明によって計測対象の光反射特性のフーリエ係数が実時間で検出できることを実証するため,本年度は同様の正弦波変調を分光イメージングに適用した.まず,分光分布が可変の光源を用いて,各波長成分が波長に線形な位相シフトを伴って正弦波で強度変調される照明を実現した.次に,この照明を撮影対象に照射して時間相関カメラで撮影することにより,対象表面上の各点における分光反射率の1・2次フーリエ係数が1フレーム出力画像として得られることを実験により示した.この成果は2件の国内学会および1件の国際学会において口頭発表した.
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