研究課題/領域番号 |
16K00265
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
嵯峨 智 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (10451535)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 触覚ディスプレイ / 剪断力 / 熱放射 / ヒューマンインタフェース / バーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,近年広く普及するタッチパネル上での情報化された仮想物体への直感的な双方向触覚インタラクションを容易なものとし,より高い質感を提示可能なデバイスのための触覚提示手法の確立と,錯触覚における人間の質感認識機序の分析である.そのため,剪断力を用いた錯触覚現象を積極的に利用し,タッチパネルなどの平面上での仮想物体との視触覚一致型相互インタラクションを実現する.
これまでの提示手法そのままでは狙いの提示が難しいことが,昨年度の基礎的な実証実験から判明したため,錯触を活かした提示手法について被験者実験を通じた実証実験を実施し,有効な入力信号の生成手法について検討してきた.そのため触覚の知覚強度と触感の評価実験を行うことで入力波形と知覚刺激との関連性を調査した.入力信号をシステムに入力し,触察した被験者の主観的印象を日本語のオノマトペとして収集分類することで,静電気力による触覚ディスプレイの表現能力を検証した.その結果,知覚強度は入力波形の周波数成分に依存すること,提示可能な触感としては「粗い」や「硬い」といった触覚表現が可能であることがわかった.
また,空間中での熱放射による錯触覚提示のプロトタイプとして,ハロゲンヒータと可動ミラーを用いたシステムを構成した.ユーザは空間中で自由に手を動かすが,仮想物体との干渉を空間センサで検知したときにハロゲンヒータによる熱放射を掌などに照射し,掌を高速に加熱する.人の自己受容感覚と,45℃以上の侵害性刺激を忌避する人の特性とあわせて利用することで,人はそこに物体があるかのように感じる.この錯覚を利用し,力覚様の提示を実現することを目指す.本年度は前年度の成果であるキャリブレーション手法を応用した位置あわせの手法に加え,放射熱のキャリブレーション手法について提案し,掌と熱源との距離に依存せず同程度の放射熱を掌に照射するシステムを実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,近年広く普及するタッチパネル上での情報化された仮想物体への直感的な双方向触覚インタラクションを容易なものとし,より高い質感を提示可能なデバイスのための触覚提示手法の確立と,錯触覚における人間の質感認識機序の分析である.そのため,剪断力を用いた錯触覚現象を積極的に利用し,タッチパネルなどの平面上での仮想物体との視触覚一致型相互インタラクションを実現する.
本年度は,錯触を活かした提示手法について被験者実験を通じた実証実験を実施し,有効な入力信号の生成手法について検討してきた.その結果,触覚の知覚強度と触感の評価実験を行うことで入力波形と知覚刺激との関連性を調査した.入力信号をシステムに入力し,触察した被験者の主観的印象を日本語のオノマトペとして収集分類することで,静電気力による触覚ディスプレイの表現能力を検証した.その結果,知覚強度は入力波形の周波数成分に依存すること,提示可能な触感としては「粗い」や「硬い」といった触覚表現が可能であることがわかった.
また,空間中での熱放射による錯触覚提示のプロトタイプとして,ハロゲンヒータと可動ミラーを用いたシステムを構成した.ユーザは空間中で自由に手を動かすが,仮想物体との干渉を空間センサで検知したときにハロゲンヒータによる熱放射を掌などに照射し,掌を高速に加熱する.人の自己受容感覚と,45℃以上の侵害性刺激を忌避する人の特性とあわせて利用することで,人はそこに物体があるかのように感じる.この錯覚を利用し,力覚様の提示を実現することを目指す.本年度は前年度の成果であるコンピュータビジョンによるキャリブレーション手法を応用した位置あわせの手法に加え,放射熱のキャリブレーション手法について提案し,掌と熱源との距離に依存せず同程度の放射熱を掌に照射するシステムを実現した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開発した静電気力ディスプレイを多電極に拡張し,オノマトペの実験を通じて得られた表現可能性とあわせて検討しつつ,より多様な触感を生成可能な触覚レンダリング方式を実装する.このようにして制作されたシステムを用いて,さらなる被験者実験を通じて,提案するシステムの触覚レンダリングの実用性と表現可能性を定量的に評価する.
加えて,前年度までにコンピュータビジョンによるキャリブレーション手法を応用した位置あわせの手法と,放射熱のキャリブレーション手法をもとに,より距離依存性のないシステムとして,レーザ光源を利用したシステムを制作する.制作されたシステムを用いて,投影面スキャニングと照射位置制御のための首振りを同時に可能なミラーの駆動方法を実装し,被験者を用いた実験を通じてハロゲンランプにおけるシステムとの感覚量の違いを定量的に評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究に関連する補助金として,新学術領域研究(研究領域提案型)の予算との併用により,研究に必要な備品をそれぞれの予算から適切に支出した.そのため,研究については遅滞なく進行しているが,次年度使用額が生じた. (使用計画) 次年度は,生じた次年度使用額を効果的に活かすため,静電気力生成の重要な要素であり,高額な支出が必要となるITO電極の設計および調達にあてる.これにより,最適な触覚ディスプレイの設計を柔軟に実施することを予定している.
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