研究課題/領域番号 |
16K00266
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 剛史 東京大学, 情報基盤センター, 准教授 (60324860)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | HCI / 拡張現実感 / クロスモーダル / 運動知覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、拡張現実感環境において重量知覚と歩行知覚を制御する新しい感覚提示方式を考案し、物体を持ち上げる時や坂道を上る時に人が感じる感覚的負荷を制御する基盤技術を確立することである。従来は、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感の相互作用を扱った研究が多く行われているが、本研究では、固有感覚や前庭感覚との相互作用を用いて、運動知覚を制御することを目指す。電気的筋肉刺激や、運動知覚残効現象と呼ばれる錯覚を積極的に取り入れ、物理的な刺激デバイスのみでは提示できない感覚を知覚させる方式の検討を進めている。 本研究は、(1) 視覚と固有感覚のクロスモダリティを用いた重量知覚制御方式、(2) 視覚と前庭感覚のクロスモダリティを用いた歩行知覚制御方式、(3) 固有感覚と前庭感覚のクロスモダリティを用いて運動知覚制御方式の3テーマからなる。 本年度は、視覚と固有感覚のクロスモダリティを用いた重量知覚制御として、電気的筋肉刺激(EMS, Electrical Muscle Stimulation)を用いて筋肉にフィードバックを与えることで、片腕で物体を持ち上げる際の重量知覚の変化量について検証を行った。また、(2) 視覚と前庭感覚のクロスモダリティを用いた歩行知覚制御については、拡張現実感技術を用いて、人が速度を知覚する要因の一つである周辺視野領域のオプティカルフローを変更し、実際の歩行速度よりも体感速度を向上させる手法について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚と固有感覚および前庭感覚のクロスモダリティによるユーザへの影響を調査するための実験システムの構築や、そのための基礎的な知見の収集など、概ね順調な検討が進められている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでにクロスモダリティを用いた感覚提示装置を構築するための基本要素に関する研究は順調に進んでいるため、引き続き同じ体制で研究を推進する。また、視覚・前庭感覚のクロスモダリティに関する提案手法については、傾斜面の歩行を考慮した拡張を検討するとともに、有効性を検証するために筋電位を用いた客観的評価手法に関しても検討を進める。 次年度は、前庭感覚と他の感覚のクロスモダリティを考慮した感覚提示に関する検討および感覚提示装置構築のための物品費を使用する。実験参加者には、適切な謝金を支払う予定である。また、得られた成果を対外的に発表するための旅費および学会の参加費、学術論文として研究成果をまとめるための校閲や投稿料などに研究費を使用する計画である。
|