本研究では,状況によって誘発される機能障害時に有効な文字入力手法を提案する.具体的には,1.小型タッチスクリーンで,2.片手操作,しかも視認できない状態を想定し,3.周囲から目立たないという特長をもつ文字入力手法を実現する.具体的には,丸型フェイスのスマートウォッチを実装環境とし,ここで視認せずにEdgeWrite入力を行う. 最終年度である平成30年度は2つの観点でプロジェクトを実施した.まず,振動によるフィードバック機能の研究を行った.多様な振動パターンを用いることによって,振動フィードバックによる意味的情報の表現が可能となり,従来よりも豊かなインタラクションが実現できるという仮説を設定し,これを実験によって検証した.特に,携帯端末における画面を注視できない状況での情報伝達の必要性を考慮し,振動フィードバックによる「量」と「重要度」の表現の可能性について調査した.携帯型の実験用振動デバイスを開発して実験を行った結果,量については,振動の強度が大きい方がユーザは多い量を表していると感じ,小さい方が少ない量に感じることがわかった.重要度については,振動の強度が大きい方がユーザは高い重要度を表していると感じ,小さい方が低い重要度を表していると感じることが明らかになった. 次に入力について,EdgeWriteの発展手法及び文字入力手法の応用を検討した.EdgeWriteは主として縁のなぞりを使用する入力手法であるため,縁のないベゼルレスデザインのスマートウォッチでは使用が困難である.そこで,縁の横断・交差によるスワイプジェスチャを利用した文字入力手法を提案してシステム実装を行った.本手法用にデザインした入力アルファベットは高い学習容易性をもつことが明らかになった.さらには,スマートウォッチ自体の形状の変形による入力可能性について,プロトタイプを作成して調査を行った.
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