研究課題/領域番号 |
16K00271
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
岡田 昌也 静岡大学, 情報学部, 講師 (10418519)
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研究分担者 |
多田 昌裕 近畿大学, 理工学部, 講師 (40418520)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | グループウェア / 学習分析方法論 / 教育工学 / 実世界学習 / 行動情報学 |
研究実績の概要 |
実世界に根ざした知識を得るためには,机上での学びにとどまらず,実世界の中で行動を通して学ぶ実世界学習が重要である.本研究課題は,このような実世界学習において,その「学び方」を学習させるための学習分析方法論(learning analytics)を開発するものである.このことを踏まえ,平成29年度は,以下の研究を行ったことを報告する. (1)実世界学習におけるインタラクションを,情報要求行為,仮説の提出,観察情報の報告行為などの,複数のパラメータで記述し,構造化する手法の開発. (2)協調学習の現場も含め,会話を通した共理解を成立させる「場」に関して,そのセマンティクス(意味構造)を構造化・推定する技術の開発. (3)状況の関数として発現する知能を計算論的に理解するために必要となる,構成的・実践的な研究メソドロジーの開発.
特に,顕著な成果としては,人による状況論的知能の学習を,「状況」の関数として発現する「行動」に関しての関数関係を適応的に学習する問題であると考えて,その研究メソドロジーを整理した点にある.具体的には,状況論的知能の発現の計算構造を明らかにするために,人の知能発現状況に関して生態学的妥当性を有する実験環境において,(1) 実世界における人の知能について,行動と状況の視点で確率・数理モデルを構成すること,(2) そのモデルを実践的に検証して得られた知見から新たな仮説を生成すること,の二点を繰り返す研究方法を提案した.そして,このフレームワークを基盤にして,実際に,状況論的知能についての計算論的な理解を深める研究を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度,“「実世界における学び方」の学習のための学習分析方法論の開発”の基盤となる基礎研究を行い,その成果を,学会で発表するなど,研究目的の達成に対して順調に研究を進展させたと考える. 具体的には,今年度開発した「実世界学習におけるインタラクションを,複数のパラメータで記述して構造化する手法」,「会話を通した共理解を成立させる「場」のセマンティクス(意味構造)を構造化・推定する技術」は,「実世界における学び方」がどのようであるかを理解・モデル化・可視化する際の工学的道具立てとして基礎的有効性が期待できるため,また,状況論的知能の発現メカニズムを理解するための研究フレームワークを整理できたため,研究はおおむね順調な進捗を行っていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を発展させて,今後,次の研究を行う. ・これまでの開発技術を発展させて,実際の実験における評価に応用することによって,「実世界における学び方」の学習のための学習分析方法論の有効性を検証する. 具体的には,これまでの開発技術および構成的・実践的な研究メソドロジーを,京都大学フィールド科学教育研究センター里域ステーション上賀茂試験地において実践することによって,「実世界における学び方」という状況の関数として発現する知能を計算論的に理解する研究活動を進める.また,これまでの開発技術を同試験地における実験の中で実践的に検討することによって,今回提案の研究の効果(人の知能発現状況に関して生態学的妥当性を有する実験環境における,学び方の学習に関する効果)を測定する.
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