研究実績の概要 |
平成30年度は,視点,視線方向によって,ディスプレイ上に描画する映像のピントが制御可能である電子式鏡像生成システムの構築を行った.具体的には,カメラで計測した実物体と計算機が描画した仮想物体が共存する本システムを構築した.その際,まず,実物体と仮想物体の前後関係を考慮した.この処理では,手前に在る物体は,奥に在る物体を隠蔽するようにレンダリングした.次に,実物体,あるいは,仮想物体の透明度を鑑みた.この処理では,実 / 仮想物体間に前後関係があっても,光学的透過性を有するのであれば,散乱,屈折を考慮してレンダリングを行った.さらに,実物体,あるいは,仮想物体のボケ度も配慮した.この処理では,ユーザの視線上に存在する実物体,あるいは,仮想物体に焦点を合わせ,それ以外の物体をボケさせるようにレンダリングした. また,研究期間全体を通じては,平成28ー30年度で培った技術を統合して,素早く動く物体にも対応可能になるような実時間で作動するシステムの構築を行った.実時間システムにおいて実行の律速となるのは,まず,実物体,および,仮想物体の精細 (多数ポリゴン) 描画である.また,実物体 / 仮想物体内での散乱 / 屈折現象の計算や多眼デジタルカメラからのデータ処理も律速となりうるとした.これらのプロセスを高速に実行するために,専用のハードウェア,ソフトウェアを準備した.具体的には,GPU に依存した描画プログラムを作成したり,GPU を用いた演算等を試みたり,高速演算に適したコンパイラを用いてプログラムの生成を行った.その結果,実物体と仮想物体とを融合することが可能な空間 (複空間 Complex Space) を構築することができた.すなわち,構築システムが生成する複空間に実物体を写像するだけでなく仮想物体を描画することも可能となった.
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