本研究では、ロボットを装着した作業者(ロボット装着者)に対して、遠隔から支援者(遠隔支援者)がロボットを通して支援を行う場面を想定している。本年度は、構築した遠隔支援システムの障害回避と、ロボット操作の簡便化を行うため、システムの改良を行った。具体的には、ロボットの操作を遠隔支援者の頭部の動きによって行えるよう、スマートフォン(iphone)を利用して安価なHMDを構成した。HMDはスマートフォンを頭部に固定する形とし、スマートフォンに内蔵されている加速度センサで傾きや向きを計測する。その傾きに応じてロボットの頭部を動かすことで、ロボットの頭部の向きと遠隔支援者の頭部の向きを一致させる。これによって、遠隔支援者はロボットの頭部の操作を簡易にでき、発話や支援内容に集中することができるとともに、システムは遠隔支援者の頭部の動きを記録することができる。 一方、ロボット装着者が歩行して移動するときに、遠隔支援者のHMD中の映像が大きく揺れることで、遠隔支援者に「酔い」が生じる。映像によって引き起こされる「酔い」は映像を静止させることで緩和できる。しかし、遠隔支援者はHMDの映像や音声を元に支援を行うため、リアルタイムな映像は重要であり、画像を静止させるなどは避けなければならない。この「酔い」は、装着者の上下動の影響が大きく、回転時の映像変化の影響は少ないため、上下動が多い移動時の映像に加工のみに加工を行い、「酔い」を抑制する。前年度に開発した位置計測装置を用いて、ロボット装着者の位置を計測し、ロボット装着者の移動速度が、5[cm/s] 以上になったときに、映像の周囲を遮蔽する機能を実装した。画像では困難である移動と回転を明確に分離することができ、移動時に画像がマスクされた場合においても、遠隔支援者は中心の映像を見ることができ、「酔い」を軽減しながら支援を行うことが可能になった。
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