研究課題/領域番号 |
16K00274
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
伊藤 照明 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (90284306)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒューマンインタフェース / コミュニケーションロボット / かかわり / 身体的引き込み / 運動強調ディスプレイ / ロボットアーム / ジェスチャ |
研究実績の概要 |
遠隔映像と音声通信を取り入れた遠隔コミュニケーション支援技術が実用化され多くの人に利用されている。その一方で、その場の雰囲気や話者の存在感が伝わらない,相手とのかかわり合いを感じないという問題が指摘されており、解決案のアイデアが提案されている。首の動きを模倣した動作をタブレット端末に行わせるロボットなどの出現で、遠隔者の存在感を示すアイデアが提案され、従来とは異なる新しい遠隔会議システムが報告されている。しかし,遠隔会議における相手あるいはその分身として目の前にいるロボットとの“かかわり”を感じる場を提供する技術については、まだ実装には至っていない。こうした未解決の技術に対する解決案を見出すために、本研究では,物理的にディスプレイを動かす運動強調ディスプレイに着目している。これは、動いている物体の物体座標系にディスプレイの動きを同期させることで映像内の動きを強調した臨場感創出法で、映像だけでは伝わらない臨場感の提示効果が報告されている。この運動強調ディスプレイのアイデアを応用し、“かかわり”を実感させることが本研究の目標である。 本研究では、タブレット端末に物理的な動きを付与するロボットアームとタブレット端末を統合した遠隔会議システム用プロトタイプARM-COMSを試作(課題T1)し、動作計測実験を通じて制御法を研究し、“かかわり”を感じさせる機能の実装を目指す。情報端末として使用する際には操作者との心理的な距離を考慮した配置を行うことで、タブレット端末との“かかわり”を実感させる機能(課題T2)を開発する。遠隔会議端末として使用する際には、遠隔者の動作や会話に応じて遠隔者の映像を示すタブレット端末の位置(課題T3)と動き(課題T4)を制御し、遠隔者との間での身体的引き込み現象を、ARM-COMSを介して生じさせることで、遠隔者との“かかわり”を実感させる機能実装を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の取り組みで測実験装置環境およびARM-COMS制御プログラムの開発・評価のための実験データ計測環境が整備できたことから、平成29年度は、課題T3及び課題T4を中心に取り組んだ。 課題T4は、遠隔会議の際にタブレット端末に遠隔者が乗り移っているような動きをタブレット端末で表現するための機能である。頭部動作データをリアルタイムで取得し、タブレットの動きをそれに連動させる機能を実装した。そのため、磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサなどを被験者に装着し、正確な動作制御を行う方式とした。しかし、実際の運用で身体的に物体を装着することは好ましくない。そこで、カメラからの画像をトリガーとして被験者の顔画像を取得し、顔の向きとその動きの取得データをリアルタイムに用いることでARM-COMSを制御する仕組みを構築した。さらに、遠隔会議用途で用いるために、通信用サーバを介したネットワーク通信によるARM-COMS制御を行う方式による機能を実装した。 課題T3では、遠隔者との“かかわり”の場を提供する空間配置アルゴリズム開発である。これは、課題T4で実装するARM-COMS制御方式を応用し、遠隔会議における遠隔者のアバターとしての制御ではなく、RM-COMSがローカルな相手との応答において行う自律的な動作として実装する方式とした。そのため、ローカルな対話者の音声に反応する機構を開発し、遠隔者の動きと連動させるための基礎を開発した。 アルゴリズム評価およびユーザビリティ評価に関して連携研究者との議論により得られた知見に基づいて、これまでに実装した試作機を用いて、その有効性評価を行った。被験者として、日本人に加えてマレーシア人協力者に協力を得て行った結果、文化の違いよる動作の違いが認められるとともに、被験者の動きを解析するためのデータ計測方法の見通しを立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
課題T1が完了し、課題T3および課題T4に取り組んでいる。平成30年では、この試作機を調整しながら、被験者の頭部動作をトリガーとしてARM-COMSを制御するとともに、ローカルな応答を統合することで、遠隔者との“かかわり”を感じさせる機能として、課題T3、T4に引き続き取り組む予定である。 課題T4は、遠隔会議用の通信機器としてタブレットを用いる際に、タブレット端末に遠隔者が乗り移っているような動きをタブレット端末で表現するための機能である。まず、平成29年度で試作したプログラム、即ちUSBカメラからの画像をトリガーとして被験者の動作を取得し、そのデータをリアルタイムに用いることでARM-COMSを制御する方式を改良し、磁気センサ、ジャイロセンサ、加速度センサなどの計測データで確認しながら、動作制御の精度向上に取り組む予定である。 課題T3は自律位置決め機能である。ARM-COMSがローカルな相手との応答において行う自律的な動作として実装する方式である。そのため、平成29年度で開発したローカルな対話者の音声に反応する機構を改良し、遠隔者の動きと連動させるための基礎を開発する。 この課題T3と課題T4を統合し、アバターとしてのタブレットを通じて、遠隔者との“かかわり”を感じる自律位置決め機能と、自律動作機能を実装するためのアルゴリズム開発に取り組む予定である。 課題T2はタブレットを遠隔通信用途ではなく、IT機器として使用する際にも、タブレットとの“かかわり”を感じさせるための機能である。これは、利用者とタブレット間の自律位置決めに基づいて実装する予定である。 以上の成果を踏まえて、課題T5のための実験、解析、そしてユーザビリティ評価を行い、研究全体を総括する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 3月の経理処理となり、支払いが完了していないため。 (計画) 4月に支払いが完了する予定である。
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