実車環境での覚醒度維持タスクはステアリング把持,ボタン操作,サッカード誘導刺激が効果のあることがわかった.三つのタスクの共通点は,自動運転中に能動的操作があることである.それぞれ,手,腕,眼球の運動があり,静的軽運動には身体疲労の回復効果があるとされることからこのような運動負荷が覚醒維持につながったと考えられる. タスク無しではほとんどの協力者が入眠した.また,脳波のα出現率においても最も高い値を示した.これより,覚醒維持システムが存在しない環境,すなわち自動運転中のドライバは何もしていない状態で入眠しやすいことがわかる.これは,DS実験においても同様の結果となり,DS実験が覚醒度維持タスク検証に有効であることがわかる.よって,自動運転技術の発展において覚醒度維持HMI開発は重要であることが確認できた.また,協力者の年齢層別に全タスク中の入眠割合をみると,若年が53%,中年が56%,老年が72%であった.このことから,ドライバの年齢によって覚醒度維持が変化する可能性が挙げられる.よって,覚醒度維持タスクを考案する場合,ドライバの年齢層を考慮する必要があると考えられる. 上記タスクは覚醒度維持効果が見られたが,実験協力者全員が維持できたわけではない.よって,今後はタスクの条件を変化させ,最適な条件でのタスク検討が必要である.サッカード誘導視覚刺激では,LEDの点滅周期を変化させ,最も覚醒維持効果がみられる周期間隔を検証や、今回の結果をもとに,低負荷な身体運動を取り入れた新たな覚醒維持タスク検討が課題となる.
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