本研究の主な成果は以下のとおりである.光の透過率を変化させる振幅型ホログラムでは回折効率は低い(再生像が暗い)が元画像と比較した構造的類似度は高い(元の画像に近い)のに対し,光の位相を変化させる位相型ホログラムでは光の吸収がないため回折効率が高い(再生像が明るい)反面構造的類似度は振幅型ホログラムよりも低くなった.参照光が不要な位相ホログラムの一種であるキノフォームでは,繰返しによる位相の最適化を行うと極めて高い画質の再生像が得られるが,高速計算には向かない.光学ホログラムにおける漂白型位相ホログラムにおいて,漂白を90%で終了し振幅型ホログラムの高い構造的類似度と位相型ホログラムの高い回折効率を兼ね備えたホログラムが実現できることを明らかにした.国際標準化の検討として,静止画像の圧縮を検討しているJPEGがホログラムのデジタルデータの圧縮と画質の評価方法を検討しているので,この国際会議に参加して情報交換を行った.ホログラムから再生される3次元空間像の評価方法について,数値シミュレーションと光学再生実験の双方から検討を行った. 今後に残された課題等は以下のとおりである.数値シミュレーションによる画質評価では,理想的な状態で客観的な評価が可能であることが明らかになったが,光学再生像による評価では実験系の調整不足やレーザのコヒーレンスに起因する雑音などにより画質が悪化するため,ホログラム信号の劣化と光学系の影響による画質の低下を分離することが難しいことが明らかになった.逆に,劣化の無いホログラム信号を再生すれば光学再生系の評価が行えることが分かった.客観的な評価と多くの観察者による主観的な評価の相関については20名の観察者と1種類の再生像についての比較は行えたが,より多くの観察者と像の種類による主観評価については最終年度のコロナウイルスによる影響で実施ができなかった.
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