本研究の目的は、モバイルデバイスと物理的なインターフェースとのインタラクションをデザインすることである。研究期間中には、複数のモバイル機器を連携させるためのインターフェースや手法の設計に関連して複数の試みを行った。いずれも、オブジェクトの利用やデバイスに働きかけるアクションなどの物理的な行為がインタラクションの中で自然な意味を持つようにデザインすることを共通テーマとしている。
まず、複数のモバイルデバイスのパネルに同時に接触するようなオブジェクトを用い、各デバイスで動作しているアプリを連携動作させることを試みた。複数デバイスを連携させる試みのバリエーションとして、カメラで他のデバイスを捉えるというインタラクションの実装も行った。物理オブジェクトの利用の発展としては、パネル上に押し付けてアプリと連携するパンフレットの制作をした。これらは、「こうしたらこうなって欲しい」という結果が得られるやりとりの実現を図ったもので、デジタル機能が自然な形で日常生活の一部となるときの在り方に繋がると考えている。
そうした研究の発展から最終年度行った内容は、音楽が結晶化したオブジェクトを水中に投入すると、音楽が溶け出してくるというインスタレーションの作成である。溶け出す感じを演出するためにオブジェクト中にドライアイスや入浴剤などを仕込んでおり、オブジェクトを水中に落とすと泡が放出するようにしている。この仕組みのなかでオブジェクトは、機能的には音楽を鳴らすための「スイッチ」として作用しているが、ユーザー体験としては音楽を聴くために溶かす結晶として認識される。ユーザーテストとアンケートによる調査も行い、新たな体験を提供できることが確認できた。論文は国際カンファレンスに投稿し受理されており、4月に入ってから発表予定である(実施済み)。
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