研究課題/領域番号 |
16K00285
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
坂内 祐一 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (70622124)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 嗅覚ディスプレイ / 嗅覚 / 痛覚 / 順応 |
研究実績の概要 |
本研究は香り射出量を精密に制御できる嗅覚ディスプレイを用いて,嗅覚順応/非順応状態を生起させ,それぞれの状態での香り刺激が人の痛覚にどのような影響を与えるかを調べることを目的としている.初年度の計画は以下の3点である.(1)先行研究調査と鎮痛効果のある香りの選定.(2)痛覚刺激と知覚強度の関係を調べる.(3)香りが痛覚へ及ぼす影響を調べる実験を行う. (1)文献および学会での調査により先行研究の調査の結果,痛みに対する香りの鎮痛効果を調べた研究では,呼吸や脳血流・脳波などの生理学的指標またはVAS(Visual Analog Scale)などの主観評価値を用いた実験結果が少数存在する.鎮静系の香りであるローズまたはラベンダの香りを提示することにより,生理指標や主観評価値で痛みの低減が見られている. (2)知覚・痛覚定量分析装置(ペインビジョン)は身体の痛みを打ち消す電流値を持って痛みを定量化している.今回は知覚・痛覚定量分析装置自体の電流値の増減により触覚閾値および痛覚閾値を測定することを試みた.痛みを感じる閾値に個人ごとのバラツキが大きく,同じ個人でも試行ごとに閾値が変動し安定した値を得るためにはある程度の習熟が必要であることが判明した. (3)電流刺激による痛みの知覚に習熟した被験者については,香り提示による痛み閾値の増加が見られ,香りの鎮痛効果が示された結果となったが,他の被験者では(2)の痛みの知覚自体に大きなバラツキがあり,習熟した被験者で得られた傾向は見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度計画ステップ(2)痛覚刺激と感覚強度の関係を調べる際に,知覚・痛覚定量分析装置(ペインビジョン)の電流値を直接痛覚刺激値として実験を行ったが,電気刺激に対する痛みの感度の個人差が大きく,かつ安定しないことが大きな問題点となった.文献調査でも標準的な痛覚刺激提示方法は確立されていないため,安定的に痛みを知覚させる痛覚刺激提示方法をさらに調査・検討していくことが課題である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の実施計画では,嗅覚ディスプレイを用いて嗅覚の順応/非順応を測定できる方法を開発し,非順応状態を継続できるような香り射出方法を確立することを目標としている.そのため以下のステップで予定通り研究を進める. (1) 1呼吸内での順応特性を調べる.(2)複数呼吸サイクルで順応/非順応判定方法を確立する.(3)非順応状態を継続できるような香り射出方法を求める. また平成28年度の知見として,安定的に痛みを感じさせる痛覚刺激提示方法を求めることが予想より困難であったため,上記の計画に加えて検討を進める必要がある.
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