本課題では、多様な形式のMRディスプレイ環境を主にエンタテインメント分野に応用する研究を進めてきている。その取り組みの中で、エンタテインメント性を活かした学習用教材にも対象の幅を広げてきている。平成30年度では、ここまでに取り組んだ、理科教育における生態系学習システム(MitsuDomoe)に加え ①多感覚型MR教材システム(HaptoBOX)②書籍形式のMR型教材システム(MR Book)③実世界指向プログラミング学習システム(Code Weaver)の開発を行った。 ①多感覚型MR教材システムは、マーカとアクチュエータ類を備えて手に持つ箱型のデバイスであって、MRによる視覚体験と同期して力触覚・音響・振動の提示を行うものである。拍動する心臓や、航空機などの稼働状態における振動の体感などのコンテンツを実装し、生物教育や医療・産業にも展開できる可能性を国内外の学会で示した。②書籍型MR教材システムでは、書籍をMRで増強するものであり、インタフェースの改良、コンテンツ制作のワークフロー整備など、実利用性を重視して取り組みを行った。③実世界指向プログラミング学習システムでは、キーボードやマウスなどコンピュータを直接使うというインタフェースではなく、カード型のタンジブルなインタフェースによってプログラムの基本的な概念を学習し得るものとした。 本年度では、上記のような事例開発を重ねるとともに、これまで開発してきた件も含めて、国内外での発表展示を重点的に行った。当該発表については、研究的な文脈での発表だけでなく、一般のユーザからのフィードバックが得られることを重視した。さらに、これらの成果は、医学分野の麻酔科および集中治療科の学会においても成果発表をおこない、医療関係者との意見交換から、エンタテインメントを越えて、人の健康・保健に関わる応用にも展開しうる可能性を示すことができた。
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