研究課題
昨年度課題として抽出された非定常データに対する方法論に関する試行錯誤を実施した.本研究課題の一環で共同研究として立ち上げた,JAXA(宇宙航空研究開発機構)航空技術本部が解明を進める,遷音速バフェット現象の非定常大規模空気力学データセットを研究対象として,多様なデータマイニングを実施することで手法の開発・改良を進めた.非定常大規模データは,現在データ解析分野で喫緊の課題であり,方法論の汎用性を議論する上で適切な研究対象である.一つは一昨年度研究開発した設計ルールの階層構造化手法を適用した.この場合,入力するデータセットの圧縮が必要になるが,この圧縮方法にどうしても恣意性が入らざるを得ず,背景となる物理に基づき圧縮しなければ得られる出力結果を解釈できないことが分かった.二つ目は学習分類子に基づく進化的ルールマイニングを適用し,衝撃波位置と入力データに含まれる5つの物理量との相関ルールを予測した.出力結果を階層クラスタリングでグループ化し,現在各クラスタでの物理を解釈している.本手法は,教師データから未知情報を生成するため,物理的に非現実的な解が生成される可能性があるが,遷音速バフェット現象のような物理メカニズムが不明の入力データに適用すると,その結果を物理的に解釈できないため,使用には壁がある.三つ目は位相的データ解析の開発と適用である.入力データに特段の恣意性を入れず直接的に出力結果を得られるため,方法論としては使い勝手がよい.本検討で初めて工学データに適用したため,アルゴリズムの問題点も浮き彫りになったため,さらに今後ブラッシュアップし,本来ゴールと考えている非定常大規模データの解釈,特に今回は時間的・空間的な物理解釈を推進する予定である.
1: 当初の計画以上に進展している
当初は,設計ルールの階層構造化手法の開発と発展を研究の主眼に置いていたが,採択頂いた御蔭で構築された環境の下,初年度で思った以上に研究を進められた.これにより明らかとなった課題を解決するため,他方面からの研究対象へのアプローチができるようになり,進化的ルールマイニングや位相的データ解析にまで枠組みを広げることができており,当初の予定以上の発展を望める土壌ができつつある現状に鑑みて判断した.
研究実績の概要で概略をまとめた通り,多角的に非定常空気力学的大規模データへの解釈を進める.これまでの試行錯誤の結果,各方法論の持つ課題が明らかになりつつある.一つは入力データの圧縮方法,一つは出力データの物理的解釈方法,一つは位相的データ解析のアルゴリズムの改良である.特に最後の課題は一朝一夕に解決できるものではないが,汎用的な方法論への発展のために,是非継続発展させたい.
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.di.mi.uec.ac.jp/chiba/publication.html