研究課題/領域番号 |
16K00299
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
長谷川 孝博 静岡大学, 情報基盤センター, 准教授 (40293609)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイニング / インテリジェンスマイニング / 形態要素分析 / 文書採点 / IR |
研究実績の概要 |
本研究の主題であるインテリジェンスマイニング(IM)は、論述文の11品詞と連語の出現率を社説などの手本となる文書の出現率と比較して文書採点を行うアルゴズムである。またこれらの品詞や連語の属する体言(名詞など他に5品詞)、用言(動詞・形容詞・形容動詞)、付属語(助詞・助動詞・連語)の出現率から論述者の適性診断(傾向診断)を行う。 研究初年度では、約130名の学生から400字から800字の任意課題の論述文をWEBフォームより収集し、IMによる1.文書採点と2.適性診断を行った。同時に3.IMの文書修正指示に倣って40点レベルの文書評価点を90点に向上させた修正文の2つを130名の学生にIMによる文章向上の結果を例示した。2.と3.の結果について、当該学生らに評価アンケートを実施し、結果をまとめた。 2.の結果によれば、IMによる論述文からの「キーワードの抽出」では、74%が「とても適切」、または「適切」と評価した。「中心センテンスの抽出」では、77%が「とても適切」または「適切」と回答した。その他のIMの診断項目(思考力、パーソナリティタイプ、インテリジェンス(適性・適職・個性・対人性)、総評)においては「とても適切」と「適切」の合計の支持率は50%程度であった。これらはいずれも論述者本人の主観のバイアスを通して評価を判断すること、および論述文における体言、用言、付属語の出現割合で、被験者の適性を6パターンに振り分けるIMの診断特性が混在した結果であると考えられる。 3.の結果によれば、73%の学生がIMの文書採点による50点の点数向上を支持した。「どちらともいえない」が16%、「支持しない」も10%存在した。未回答者1%。 以上、IMによる論述文の適性診断において130名規模の定量的な評価値が得られたことは初年度の成果のひとつである。また文章の採点評価支持の73%については、評価方法の改善点も明らかになり、再調査を継続する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インテリジェンスマイニング(IM)の第一人者である長谷川博彰氏(静岡大学客員教授の研究協力者)との研究会議を継続的に進め、IMの基礎的な知見を得ることができた。研究者自身の数多くの文書採点プロセスを確認することで、その特性と効果を定性的または定量的な両側面で体験することができ、IMの可能性と限界性能の概要を把握することができた。 当初予期していなかった外部指針の変更について「文部科学省は2020 年度から“論述”形式の大学入試を採用することを発表した」がある。本指針の発表後に大学を含む関係各所から多くの意見が寄せられたようである。その結果、現在では400文字以上の論述文は一文節程度にまで短縮される案に修正されている。しかしながらこの変更は、日本語の論述文の客観的かつ定量的な測定が困難さを反映したものであり、そこにIMの文章採点の性能が如何に有効であるかを明らかにしていく本研究テーマの主軸は揺らぐことはない。むしろ意義を増したと考えて、今後の研究を進めて行きたい。 また初年度の研究活動を通じて、IR(Institutional Research)におけるIM活用の有効性が見出せたことは成果のひとつである。今後は学内のIR委員会との情報連携を進めながらIRにおかるIM導入の効果についても研究を進めて行く計画である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の基礎研究の結果を踏まえて、本提案手法の可能性に関するより深い検証を行う。1年目の結果では、IMの優位性が明確に支持する結果ばかりではなかった。IMの性能の限界を明らかにしていきたい。IMをIRに活かすことの意義について検証を進めたい。 1 年目と同様に、蓄積されていくサンプル論述文に対する継続的な解析試験を行なうとともに、筆記者への評価結果を開示し、評価結果の満足度や説得力に関するフィードバック試験を行う。 学内の協力教員による評価結果の論評などを行い、上記とは別の角度からも評価の妥当性を検証する。 本手法の可能性を明らかにする一方で、本手法の限界を明らかにすることも重要である。本手法の弱点を補うためのハイブリッド手法として、どのような既存アルゴリズムが適当であるかの検証を行う。 2 年目後半までには、成果について口頭での学会発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画より安価な備品や消耗品を購入できたために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表等の費用に有効活用する計画である。
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