研究課題/領域番号 |
16K00321
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
矢内 浩文 茨城大学, 工学部, 准教授 (10222358)
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研究分担者 |
赤羽 秀郎 茨城大学, 工学部, 教授 (50192886)
梅津 信幸 茨城大学, 工学部, 講師 (30312771)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 単語 / 熟語 / デタラメ / 語彙判断 / エラー / 概形 / 外形 / 非言語情報 |
研究実績の概要 |
これは、人が誤字を無意識に自動訂正し、誤って正しい熟語であると認識する行動の特性を分析することによって、読字のメカニズムを推定しようとする研究である。 以前の私たちの研究(矢内,林, 2016)により、横書きの熟語と非熟語を刺激とした語彙判断課題に関して、漢字の概形が判断成績に影響することが示された。昨年度は書字方向(横書き、縦書き)が判断成績に及ぼす影響を調べることを主な課題とし、個々の漢字の概形のみならず、2字熟語全体の概形が処理に関わっている可能性が示唆された。 今年度は、書字方向の影響のより詳しい分析と、漢字とは別に図形を重畳する刺激を用いた実験を進める計画を立てていた。しかし、それに先立ち、来年度に計画していた注意順序の制御の影響を、横書き提示刺激を用いて調べることにした。なぜなら、概形依存性の考察には、実験協力者の注意の順序の制御が不可欠であると判断し、注意の順序の影響を明確にしたかったからである。 横書き呈示漢字2文字のうち左側の漢字を[CL]、右側の漢字を[CR]とし、刺激(熟語あるいは非熟語)を[CL][CR]と表わす。[CL]を先に呈示する刺激と[CR]を先に呈示する刺激を用意し(呈示間隔は15ms)、空間配置に基づく語彙判断(実験協力者に求められていること)と、時間順序の熟語性(時間的に熟語の順に呈示されるか否か)の干渉を分析した。特に明確な差異が観察されたのは、空間配置が熟語の刺激について、時間順序が熟語の場合と非熟語の場合である。時間順序も熟語で呈示された場合に比べて、時間順序が非熟語で呈示された場合の語彙判断成績が大きく低下した。このことは、[CL]と[CR]に注意の向けられる順序が語彙判断に大きく影響していることを示しており、漢字の概形が誘目性に与える影響と合わせて考察することによって、読字の脳内メカニズムの推定につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、今年度(2年目)は漢字とは別に図形を重畳する刺激を用いた実験を計画していた。また、昨年度(1年目)の結果を踏まえ、図形重畳刺激の影響の分析に加え、昨年度に得られた結果(書字方向が横であるか縦であるかが語彙判断に影響している)を詳しく分析することを予定していた。 しかしながら、この研究を進めるにあたり、実験協力者の注意の順序の制御が不可欠であると判断し、注意の順序の影響を明確化する研究(3年目に予定していた)を先に実施することとした。 このように、計画の実施順序は変更したものの、来年度(3年目)に実施予定であった実験と分析を行なうことによって有益な考察を進めることができたため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の現在、1年目に計画していた課題(2字熟語の語彙判断において、熟語全体の概形が影響するか否か)をおおよそ解決し、より詳しい分析を進める段階にある。また、2年目に計画していた課題(漢字とは別に図形を重畳する刺激を用いた実験と分析)への取り組みは実施を延期したが、3年目に計画していた課題(漢字2字それぞれに注意が向けられる順序が語彙判断課題に及ぼす影響の分析)に取り組み始め、今後の実験計画と分析、考察のために有益な知見を得た。 ただし、本年度(2年目に)実施した注意順序を想定した実験は、実際には文字出現順序を制御する方法を用いた。これは注意の観点からはやや強引な手法であると考えている。そこで今後(3年目)は、文字出現順序の影響と、刺激呈示を受けて自然に生じる注意(誘目性など)の関係の考察を行なう予定である。また、研究計画では本年度(2年目に)実施を予定していた課題(漢字とは別に図形を重畳する刺激を用いた実験と分析)にも取り組み、漢字個々の概形、熟語全体の概形、刺激出現の順序、注意の向けられる順序、を総合的に分析、考察する予定である。そうすることによって、熟語認識処理の2経路仮説における概形経路の役割を検証し、読字の脳内メカニズムの推定につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 文具の購入に際し、物品費残金が1個の価格に満たなかったため。 (使用計画) 次年度使用額は、文具購入費に充てる計画である。
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