研究課題/領域番号 |
16K00322
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
亀山 啓輔 筑波大学, システム情報系, 教授 (40242309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高次スペクトル / 信号認識 / ニューラルネットワーク / サポートベクトルマシン / カーネル法 / 生体認証 / 虹彩 |
研究実績の概要 |
初年度である平成28年度は,提案する高次スペクトルカーネルを用いたカーネル学習と,神経回路網モデルでの実現を目指す勾配学習との組み合わせを実現するための基礎的な検討を行った.対象とする同種の信号分類問題に対して学習した高次スペクトルカーネルを用いたSVMにより選出されたサポートベクトルを手掛かりに,分類に有用な空間周波数の組を推定する方法について検討を進めた.さらに,推定した有用な特徴量を初期値とする高次複素畳み込み神経回路網(HOCNN)の,誤差逆伝播法(BP)に基づく学習アルゴリズムの検討を進めた. また,CNNを含む層状神経回路網を用いて多クラス分類を行う際に問題となるクラスの追加の際に必要となる追加学習の方法,これを実現する上で必要となる出力コードの選択について検討を進め,学習済みの神経回路網を融合することでクラスの追加を実現し,出力コードとして誤り訂正符号を用いる方式の提案を行った. さらに,従来より行っている高次スペクトル特徴量を用いた虹彩認証法の開発を進め,1)虹彩上の複数個所の局所スペクトル情報の,カーネル関数に倣った関係性を特徴とすることにより,加法性雑音に頑健な認証が可能となること,2)高次スペクトル,特に3次の特徴量を用いることで従来用いられてきた局所スペクトル(Gaborフィルタ出力:1次)や,局所パワースペクトル(2次)特徴量と比較して,登録者と詐称者との違いを明確にすることができ,認証精度を向上できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度中の完了を計画していたHOCNNの学習アルゴリズムの検討とシミュレータの作成は,完了に至らなかったが,基礎的な検討は着実に行われている.一方,高次スペクトル特徴量の虹彩認証への応用については,当初の想定を超えた成果を得ることでき,その成果を研究会報告2報,国際学会論文1報にまとめることができた点,当初の計画以上と考える.総じて,概ね順調な進捗と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,HOCNNシミュレータの開発に注力するとともに,導入する並列処理学習実験用コンピュータ上にHOCNNシミュレータを実装し,実世界の大規模な認識/分類問題における有効性を検証する.また,高次スペクトル特徴量の次数ごとの性質を改めて精査し,より高次の特徴量を用いた場合の有効性について検証する. 1. 高次スペクトル特徴量学習アルゴリズムの高度化 : HOCNNの学習アルゴリズムに,特徴量の正則化学習,ネットワークの動的モデル選択による学習/運用の効率化などの観点からの高度化を図る. 2. HOCNNシミュレータの並列処理実装 : 平成29年度に導入する並列処理実験用コンピュータ上に,HOCNNシミュレータを実装する.搭載しているGPGPUの並列性を生かすべく,並列化可能な処理をGPGPUに割り当て,効率的な学習と分類が可能となるよう工夫する. 3. 大規模な認識/分類問題への適用と評価 : 当研究グループで進めている,虹彩認証をはじめとする実世界の認識/分類問題に提案する枠組みを適用し,実世界の大規模な問題に対する有効性を検証する.これらの応用結果に関しては逐一研究会,国際学会で報告し,さらに雑誌論文としてまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定と比較して,より多くの部分を既存設備を用いて実施することができたため,購入を予定していた学習実験用コンピュータの導入は見送ることで,当初申請額から減額された研究費の分を補い,次年度に購入を計画している並列処理学習実験用コンピュータに十分な資金を充て,有効な研究成果を得ることができると判断した.
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次年度使用額の使用計画 |
(設備備品) 2年目以降は,学習と類似度評価を高速に並列処理可能なGPGPU 装置を搭載した並列処理実験用コンピュータ,開発用ソフトウェア,液晶モニタを導入する.また,同時に大量の画像を保存できるNASシステム(ディスクドライブは別売り) を導入し,2年目は4台,3 年目にさらに6 台のディスクドライブを設置して増大が予想される画像データを格納する.(旅費) 年度ごとに研究会報告を国内で2件程度行い,さらに国際的にもニューラルネットワーク分野の国際学会で成果を報告し,関連する同分野の研究動向を把握するための国際学会出張を行う.(人件費・謝金) 画像データや資料の整理のために,各年度とも1人×3月の程度の短期雇用を行う.H28年度の未使用額は,主として並列処理実験用コンピュータの導入費用の一部として,H29年度配分と合わせて執行する.
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