本研究では,実問題に応用可能な非線形力学系モデルを用いた最適化手法と機械学習の融合技術の開発を目的とした研究を実施している。 本年度は,(1) 前年度までに提案した勾配正規化と学習率調整機構を導入したミニバッチ学習法の改良,(2) SMOを用いた複数集団経路選択ゲーム問題の高速解法の提案,(3) 計算知能技術の熱源機器運用計画問題の解法,自動ピッキングシステムの運用計画問題の解法,上水道ポンプ運用計画問題の解法への応用,(4) Autoencoderと特徴量抽出機構を伴った新たなニューラルネットワークの学習法の開発を行い,1件の論文発表,6件の国内学会発表を行った。 本年度の成果を含めて、研究期間全体を通して、冗長経路除去とSMOを用いたネットワークルーティング問題の高速解法の開発,非線形力学系モデルを用いた最適化手法の深層学習問題への応用と新たな深層学習アルゴリズムの開発,自己組織化マップとその派生法を用いたパレート解可視化手法の開発,パラメータ調整を伴わない非線形力学系モデルを用いた最適化手法の開発と並列化を達成した。そして,これらを含む計算知能技術の実問題への応用を行い,その有効性を確認した。 昨今,人工知能技術が大きな注目を集めているが,その根幹をなすのが,機械学習と最適化技術を中心とする計算知能技術である。本研究課題で得られた成果は,この計算知能技術のうち,非線形力学系を用いた最適化手法と機械学習の融合技術の開発に関するものである。また,その有用性を実問題を用いて検証しており,計算知能技術,ひいては人工知能技術の発展に資する研究成果であるといえる。
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