研究課題/領域番号 |
16K00328
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
庄野 逸 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50263231)
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研究分担者 |
坂田 宗之 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00403329)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PET画像再構成 / スパース基底 / 辞書学習 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究は,医用画像において用いられる CT 画像や PET 画像といった断層診断画像におけるノイズ低減を,スパース表現と階層型ニューラルネットワークの一種である深層学習(Deep Learning: DL)とを用いて実現することが目的である.本研究は3つの課題を設定しており,課題1としてPETおよびCT画像の観測過程に適したスパース表現の検討,課題2としてスパース表現を用いたノイズの低減手法の開発,課題3としてディープラーニングを用いた深層スパース表現の獲得を設定した. 平成28年度は課題1と課題3に関する予備的検討に取り組んだ.課題1としては,ラドン変換を用いた辞書学習に関する検討をした.PETやCTといった断層画像での撮像原理は,通常のカメラとは異なりラドン変換という物理モデルに従う.ラドン変換の撮像データとしてはサイノグラムと呼ばれるデータが得られるため,このデータ表現に対して,スパース表現を獲得するために辞書学習と呼ばれる基底取得方法を用いた.辞書学習によって得られた基底から得られる画像は,従来のマルコフ確率場を用いた再構成手法よりも,撮像対象の細部構造を維持しつつノイズ低減できる可能性をしめすことに成功した.また,課題3の予備実験としては,視覚心理学で提唱された多重解像度基底を用いてテクスチャ画像の階層表現を試みた.その結果,多重解像度基底に置けるスケールを考慮した階層ネットワーク構造を構築しない,元のテクスチャ画像の構造を表現し得ないことがわかってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の課題としては,PETおよびCT画像画像の観測過程に適したスパース表現の検討を主に行い,課題3に関する予備的検討に取り組んだ.課題1では,ラドン変換を再定式化し,その上でこの表現に適した基底の検討を行った.一般の画像は,スパース表現を与えるために,2次元の格子空間上で辞書学習を行う.自然画像に辞書学習を適用した場合,エッジや線分と行ったガボール特徴のような基底が得られる.これに対して,ラドン変換を用いた場合,どのような結果が得られるかは不明である.またPETやCTといった機材を用いて実際に撮像することは一般に高価であり,学習に用いるほど大量のデータを得ることは困難である.そこで,我々は,シミュレーションで自然画像に対してラドン変換を施し,得られたデータに対して辞書学習を行った.この辞書学習を用いた再構成結果は,良い再構成結果をもたらすことがわかってきた. ただし,タイムスケジュールとしては,やや遅れており,予定していた研究会や学会発表が行えていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究方針としては,上記課題1で得られた結果の成果発表を行うこと,辞書学習によって得られたスパース表現手法を用いた課題2の遂行が主な目標となる.課題1は,シミュレーションによって得られたデータから辞書学習を行っており,実際のデータに関して,ポアソンノイズと言った実機特有の効果を考慮に入れていない.そこで,学習データを獲得する際にシミュレータを実機条件に近づけることで,さまざまなアーチファクトを導入することを試みる.また,本研究では,従来のPETやCT画像の再構成手法とは異なり,モデルを考える空間として連続空間を想定しているため,解像度に関する設定が自由に執り行える.そこで解像度の変化に対してどの程度の頑健性を持つかを調査する予定である. また課題2では,ノイズの低減を目的とした場合,辞書学習を用いたスパース表現がどの程度有効かを検討する.特にPETやCT画像といった画像は撮像装置特有のノイズが発生するためにこれに対応する必要が重要である.辞書学習は,強力な手法であるが,観測信号にノイズが含まれる場合,ノイズとソースとの切り分けが重要になってくる.本研究ではシミュレータを用いて,観測信号を生成しているので,これに対してノイズを加えていくことはコントロールが取れるので,辞書学習がどの程度の頑健性を持つかを検討することが可能であると考えられる.平成29年度は,このようなノイズに対する耐性の評価をシミュレーションの上で評価することを考えていく.また,得られた学習基底は本当の撮像データに対して役立つかどうかは実機の上で評価する必要もあるため,こちらの方も検討を加えていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗がやや遅れているため,予定していた学会出張費用などが残った形となっている.
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表の出張旅費として上記残額を使用する予定である.
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