本研究では,神経生理学の知見に基づいたニューロンモデルと細胞外電場との相互作用を有する神経システムの数理モデルを構築し,神経システムと細胞外電場からなる動的システムにおける情報処理メカニズムに関する実証的理論を行う.
本研究課題の4年度目にあたる平成31年度(令和元年度)には,神経生理学の知見に基づいて,神経回路網の構造推定を実現するための方法の構築を行うとともに,細胞外電場の影響下での神経回路網の数理モデルに基づいて,神経システムと細胞外電場からなる動的システムにおける情報処理機構の理論研究を推進した.特に,細胞外電場による非シナプス型の相互作用が神経回路網における情報処理に与える影響を,情報理論に基づく指標を用いて定量的に評価した.加えて,計測データからの神経ダイナミクスの推定に基づいたフィードバック制御を実現するための数理基盤を構築するとともに,神経システムの動的特性を定める電気特性の推定と神経システムの動的制御を同時に実現する統計的手法の構築を行った.また,多次元計測データから潜在ダイナミクスを抽出するために,関連度自動決定法やスイッチング状態空間モデルに基づく統計的アルゴリズムを構築し,その有効性を示した.これらの研究成果は,関連する国際会議や国内会議にて口頭発表を実施するとともに,査読付きの英語論文として公表した.また,これらの成果は関連研究者の注目を受け,依頼講演を受けた.
|