離散時間動的システムにおける安定固定(周期)点の安定度は最大リアプノフ指数によって特徴付けられる。本研究代表者らが開発した最大リアプノフ指数に対するパラメータ制御系を拡張し,さまざまな動的システムにおける安定状態の維持又は不適切な状態からの脱却など,複雑系のレジリエンス性向上に寄与できる制御系へと発展させることが本研究の目的である。本研究で得られた成果は次のとおり。 非自律系(連続時間動的システム)に対して外力と同期させたポアンカレ写像を適用することにより,非自律系の安定周期解をポアンカレ断面上の安定固定(周期)点として捉え,非自律系における安定周期解に対するパラメータ制御系を開発し,数値制御実験により提案系の有効性を確認した。次に,制御対象を安定非周期状態へ拡張するため,まず2次元動的システムにおける第2リアプノフ指数に対するパラメータ制御系を構築し,安定準周期点(非周期状態)に対する数値制御実験をとおして提案法の有効性を確認した。更に,制御対象を高次元の連続時間動的システムの解へと拡張するため,任意のリアプノフ指数に対するシステムパラメータの勾配計算アルゴリズムを提案し,安定準周期点の数値制御実験をとおしてその有効性を検証した。その他にも,最大リアプノフ指数がヤコビ行列のスペクトル半径に対応することに着目して,スペクトル半径最小化のアイデアに基づいた安定固定(周期)点に対するパラメータ制御系を開発した。上記研究成果の一部を国内外の学会等で発表したとともに,コロナ禍の影響によって研究期間を延長した最終年度では,任意のリアプノフ指数に対するシステムパラメータの勾配計算アルゴリズムの正当性について検討した。
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