研究課題
身体性により脳が特異的に創発する情報処理様式を実現する新しい脳型コンピュータパラダイムである「脳・身体総合体コンピューティング」を、デバイスの特性・ダイナミクスを直接使用してハードウェア実現するブレインモルフィックコンピューティングハードウェアの手法、特に、高次元複雑ニューロダイナミクスを活用して実装することが本研究の目的である。特に、システムの重要な構成要素である「参照自己」の提案とそのハードウェア実装について集中的に研究した。参照自己は、自分自身の状態をロバストかつ一貫性を持って安定な動的内部状態として表象すると同時に、これと反して、環境を含む外界からの入力に対して鋭敏にその状態を不安定化させて別の状態へと遷移させることが必要である。この相反する機能をニューラルネットワークにより実現するため、カオスニューラルネットワークリザバーを提案した。従来のリザバーネットワークでは、応答の一貫性を確保するために収束ダイナミクスが用いられ、これを阻害するカオスダイナミクスは避けられてきた。これに対し提案法では、一貫性を確保しつつ、表現可能な状態に非常に多くのバラエティーを持つ高次元カオスダイナミクスを導入することに世界で初めて成功した。提案手法の有効性を確認するため、カオスニューラルネットワークリザバーによるカオス時系列の予測を行った結果、高い性能を確認した。さらに、これを集積回路化するため、スピンオービットトルク(SOT)デバイス技術に基づいて、スパイクタイミング依存可塑性(STDP)を有する不揮発性アナログシナプスデバイスと、積分発火型(IF)ニューロンデバイスを提案・実装し、実験によりその機能を確認した。SOTによるSTDPシナプスとIFニューロンの同時実装(同じ物質と動作原理による実装)は世界初の成果である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件)
Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE
巻: 9 ページ: 218-230
10.1587/nolta.9.218
巻: 9 ページ: 231-242
10.1587/nolta.9.231
日本神経回路学会誌
巻: 25 ページ: 140-147
10.3902/jnns.25.140