今後の研究の推進方策 |
1. 分子生物モデル: 平成28年度に構築した振幅モデルを分子生物モデルに発展させ,単一細胞内で,コアの時計遺伝子である,Per, Cry, Bmal1, CREBを考慮にいれた数理モデルを構築し,それらをVIP, AVP, GABAなどの結合因子でネットワーク化する.mRNA転写速度,タンパク質分解速度,翻訳速度などのパラメータを非線形最適化により同定する.構築されたモデル方程式に基づいて,遺伝子変異体やSCNの加齢プロセスを模擬し,加齢によって概日リズムがどう変化し,性周期に非周期性を生み出すかを解明する.特に,GnRH (gonadotropin releasing hormone)が1日のある時間帯に概日リズムから信号を受けるとする仮説の下,SCNがGnRHに信号を送る数理モデルを構築し,実際のマウスのデータと整合をとることによって,仮説を検証する. 2. SCN数理モデルの実験検証: 1)で構築するSCN数理モデルに基づいて予測される最適な明暗条件下で,メスのマウスを飼育し,概日リズムおよび性周期の規則性が改善されるかを実験検証する. 3. ヒト性周期の規則性検定: マウスに対する手法のヒトへの拡張を検討する.最適環境による概日リズムと性周期の安定化をヒトに応用することを考えた場合,24時間の社会生活を送るヒトに対して,環境サイクル長を制御することは難しい.そこで,明暗比率などの光の照射方法等を調節し,個人の位相応答曲線から,最も効率的に引込みを行う明暗サイクルを求める.明暗比だけでなく,食事リズムやメラトニン服用のタイミングなども検討する.
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