研究実績の概要 |
2019年度は, 提案するディジタル周波数同期ループ(DFLL)を用いたハードウェア自己組織化マップ(Self Organizing Map: SOM)のさらなる高速化と学習性能の改善を行った.そのために,まず昨年度開発したハードウェアSOMの問題点を調べた.このSOMではパルス信号の周波数に比例する重み更新回路を用いた.そして,勝ちニューロンから周波数を下げながら伝搬するパルスを全ニューロンに伝搬することで学習を行った.この周波数を下げる回路が複雑で動作速度が上げられない,学習が不安定になっていることが分かった. これらの問題を改善するために,三角型近傍関数を用いたハードウェアSOMの開発を行った.この関数は,勝ちニューロンからの距離に比例した関数で,周波数でなくパルス幅により重み更新量を変化させる.このパルス幅変調信号を用いることで,ハードウェアコストが高い乗算回路などを用いずにハードウェア実装が可能となった.プログラム可能な回路素子であるFPGAに実システムとして実装し,実験による性能評価を行った.その結果,昨年度のSOMの学習速度が5.7MCUPS (Million Connections Update Per Second) だったのに対し15.0MCUPSと,約3倍の速度改善となった.また,2018年度版SOMでは学習に失敗した学習データに対して学習に成功し,学習能力が向上していることが確認できた. 本研究課題で提案している疑似好奇心機能を用いたSOMの応用として動画の符号化を行った.疑似好奇心は入力データの変化に合わせて学習強度が変わる適応型近傍関数により実現される.これにより学習中の入力データの変化に柔軟に対応できる.したがって,短時間で静止画が変化する動画の符号化に適している.しかし,結果は従来のSOMに劣ってしまう結果となった.改善が今後の課題である.
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