研究課題
本研究は,超音波検査と脳型情報処理の技術を利用し,魚を殺さずとも体外から魚体内の肉の状態を見ることができ,かつ魚肉の物性や肉質などの多面的情報を素人でも手に取るように理解・評価できるよう視覚化表示する「非破壊的魚肉評価・検査支援システムの開発」を目標とする.本研究課題では以下の3項目について研究を遂行することを予定としている。(A)新たな超音波魚体スキャン装置の開発(B)超音波信号を元に魚肉の性状を高精度に判別・視覚化する基盤モデルの確立(C)魚体スキャン装置で得られたデータを元に魚肉の性状判別を行う本年度の研究では各項目について研究を実施し,以下のような成果を得た。まず魚体スキャン装置の開発では,スキャン台をCADで設計し,組み立てを行った。またパルサー,レシーバー,信号のパソコンへの取り込みを行えるシステムを構築し,実験を容易に行えるようになった上に,精密な信号データを得ることができるようになった。次に,信号から魚肉の性状を判別・視覚化するモデルとして,血管内超音波法で用いられる積算後方散乱値(Integrated Back-scatter: IB)値を利用することで,魚肉の肉の性状(脂質の含有量)を推定できることが実験により示された。 具体的には数十匹のマアジから取得した超音波信号をもとに得られるIB値の分布数と脂質量(成分分析をして得る)との相関を調べた結果,IB値の分布数と脂質量に正の相関(r=0.6226,p=0.0003)がみられた。まだ高い相関とは言えないが,IB値ではなく周波数スペクトルのパターンを利用することで相関が高くなり,精度の良い脂質量推定が可能になるのではないかと考えている。同様の方法で脂質量だけではなくテクスチャ(魚肉の歯ごたえ)についても推定できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の研究計画では,超音波魚体スキャン装置の開発と,超音波から魚肉の脂質量などの物理量を推定できるかを検証することが第一の目的であった。まず超音波魚体スキャン装置については計画通りの装置が開発できている。またIB値の分布数を利用することで超音波から魚肉の脂質量を推定できることが実験により示された。このことから,本研究課題はおおむね計画通りに進展しているといえる。
ハードウェアについてはより本研究の実験に適したシステムになるよう適宜改良をする。またIB値ではなく周波数スペクトルのパターンを利用した脂質量の推定方法を提案し,それを実験によって示す予定である。本方法では周波数スペクトルのパターンを自動的に抽出する方法としてソフトコンピューティングを採用する予定である。また随時研究の成果を学会や雑誌等で発表する予定である。
超音波魚体スキャン装置の開発に関して,現有の設備を利用することで研究を進展できたので,主に物品費に余剰が生じた。
次年度直接経費総額(820,805円)消耗品費(魚体スキャン装置の整備に関わる消耗品100,000円,計算機消耗品100,000円,文房具類他10,805円); 旅費(学会発表 国内 150,000円,学会発表 海外 280,000円; その他(学会参加登録費90,000円,論文掲載費90,000円)
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