本研究では、視覚障碍者のための新しい単独歩行支援方式として、予め作成しておいた地図中で指定した経路に沿うように目的地まで誘導する方法を提案し、実際にシステムを試作してその有用性を評価することを目的とした。誘導する対象者の現在位置と姿勢を計測するセンサには近年開発された三次元レーザ距離センサを用いて周囲環境を立体的に計測し、進むべき方向の指示には複数の振動モータを配置したベルトを使用した。 まず、三次元測域センサから得られる周囲の計測データを、センサ内部にある姿勢センサの角度情報により補正し、身体の傾きが変化することに対応した。床のデータを削除し、残ったデータを用いて現在位置認識を行う方式を構築した。また、二次元のセンサでは検知できなかった床に置かれた障害物等を検出するアルゴリズムを構築し、障害物が検出された際に誘導している人間に対して減速や停止の指示を与える方式を提案した。 次に、一つの目標として考えた「駅で電車に乗る行動」について検討した。具体的には、改札のように狭い通路を通り抜ける際の誘導方法を検討し、移動方向を変える「旋回」指示に加えて「平行移動」指示も追加することで、スムーズな通り抜けを実現できることを確認した。また、階段に対する誘導方法を検討し、階段の始まる地点の手すりまでの誘導、階段の昇降、次のフロアへの到達検知と地図の切り替えに段階を分けて実装した。システムを構築して行った実験により、屋内環境において階段昇降を含めた誘導が実現可能であることを明らかにした。 さらに、誘導可能な範囲を屋外へと拡張するために、システムを利用するために必要な地図構築が難しい場面を特定し、その問題点と原因を検討した上で対策を施し、想定される典型的な屋外環境でも地図構築が正しく行えることを確認した。
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